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大学広報ゼミナール

もっとファンを増やす「共感」と「信頼」のつくり方

鈴木洋文(高崎商科大学)

大学で講義をしてくださったブライダル業界のゲスト講師から「結婚式はリピーターがいない高価格商品です」という解説を聞いたことがあります。そこで思ったのが、大学も入学を繰り返すリピーターは存在しないということです。

『ファンベース』(佐藤尚之著、筑摩書房)によると、数ゼタバイト(1ゼタバイトは世界中の砂浜の砂の数ほど)もの情報量がある現代で、送り手が伝えたい情報は「砂の一粒」ほどの存在であり、ほぼ届くことはないとしています。そのうえで、新規顧客を狙うアプローチよりも、消費を繰り返すLTV(ライフ・タイム・バリュー)の高い「ファン」を大切にした活動が有効であると言います。そのような時代に、リピーターが存在しない大学はどのようなアプローチをとっていくべきなのでしょう。

「HUB」としての大学

高崎商科大学では、先進企業と連携し、実務家とのコラボレーションで実践的に学ぶ「3.5本の矢プロジェクト」を通じて培った知見を、地域に共有する機会を増やし、社会にとっての「HUB」の役割を担う活動を活発化させています。これは結果として、自学の教育を理解し“共感”してくれるファンを増やすことにつながっていると感じます。「HUB」としての大学の活動について、いくつか例を挙げます。

高校の先生方を対象としたセミナー「それぞれの探究」では、教育界のオピニオンリーダーや先進的企業の方にご登壇いただき、社会や教育界の課題を考える機会としています。

地域対象のイベント「前へ!変化の時代の人材育成 自走する地域社会へ」では、落合陽一氏(研究者・メディアアーティスト)と柳澤大輔氏(面白法人カヤックCEO)の講演会を企画しました。コロナ禍で講演は中止となってしまったものの、開催前のアンケート調査では、大学への期待が把握できました。

ポリシーを訴求する新入試の開発

このような活動から生まれたのが、面白法人カヤックが開発したブレインストーミングカードゲームを活用してブレインストーミング体験ワークショップにより選抜を行う「探究・ブレインストーミング入試」でした。受験生の育成に主眼を置いた社会貢献の色合いが強い入試でニュースサイトでも取り上げられました。入試とは、各大学のポリシーが反映されているものです。この入試導入は、本学が目指す方向性(ポリシー)の広報活動にも大きく貢献しました。大学入学共通テストは、当日の早朝ニュースで、必ずと言っていいほど話題に取り上げられます。大学入試は、直接関係のない方でも気になるトピックスと言え、大学入試の研究者から、「大学入試は国民の関心ごとだ」という解説を聞いたこともあります。

ニュースリリースの基本は、「広告活動」ではないということ。メディアが…

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