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大学広報ゼミナール

与件整理とベクトル合わせで大学広報は“管理”のその先へ

鈴木洋文(高崎商科大学)

職員の研修会で「ニュースリリースで気をつけるべきことは何か?」という質問をいただいたことがあります。その際、唐突な質問に面を食らい、「誰にでも分かる記事を作成してはいかがでしょう?」とひどく的外れな返答をしてしまいました。「誰に何を届けたいのか。リリースに限らず、目前の業務が一体何のためにあるのか」と返答ができれば、聴講者の皆さんが得るものが多かったのではと、今でも振り返ることがあります。私は、大学人人生の中で、大学業界のみならず、各業界で活躍するたくさんのビジネスパーソンにお会いしてきました。多方面でマルチに活躍するビジネスパーソンは、活躍すればするほど、時間が不足するはずなのに、更にフィールドを広げていきます。

「仕事ができる」「アイデアをたくさん持っている」と言われる人たちは、“ピントがズレた”ことをしません。目前の課題に対する“解像度”が高く、本質を鋭く見抜き、無駄な業務を省くことでフィールドを広げることを可能にします。

「一体何のためにあるのか」という本質に気づくことは、活躍フィールドの拡充のためにも重要なことです。また、漠然と目前の業務をこなすのではなく、目的やプロセスを意識することは、タスク(業務量)管理へとつながります。勤務時間とのバランスも意識でき、働き方を考えることにもつながっていくでしょう。

本稿では、前回の理念や行動指針の管理に続き、「目前の業務の目的は何か」「プロセスのどのステージにあるのか」という、私たち自身の業務管理について、考察したいと思います。

図 企業の分業と本学における広報業務プロセス
入学に至るまでには様々な業務がある。

大学広報の「プロセス管理」

受験生が大学を選択するまでには、授業料やジャンルの幅広さも関係し、意思決定プロセスは長くなります。そのため学生募集では、購入プロセスが短い対消費者戦略(BtoC)よりも対企業戦略(BtoB)が適合することも多くなります。書籍『THE MODEL』(福田康隆著 翔泳社)は、BtoBでの営業活動について、SFA(SalesForce Automation)やMA(Marketing Automation)を活用した分業と共業について解説しています。同書を参考に企業の分業と本学における広報業務を比較してみます()。各大学により広報業務の範囲は異なると思いますが、本学のような小規模大学における広報セクションでは、マーケティング(募集戦略、市場調査、リード獲得など)、インサイドセールス(メール、SNSなど)、営業(個別相談、会場ガイダンスなど)、カスタマーサクセス(入学前アドバイス、質問対応など)に加え、メディア対応や入試業務も担っています。業務は煩雑で、多忙期には、分業どころか、プロセスも意識できない状態に陥りそうになることもあります。もしかすると、プロセスから逸脱した業務さえ存在する場面もあるかもしれません。しかし...

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