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IRの学校

IRの学校22時限目 本質を引き出すコミュニケーションとは

大森慎一(バンカーズ)

イラスト/もとき理川

上場財部株谷:今日もよろしくお願いします。

大森:今日は前回の続き、投資家からの問い合わせについてですね。

財部:そうです。難クレームかと思い、室長にお願いしたら、すっと終わってしまった、という体験談から、エスカレーションの話になりました。室長の対応にはノウハウ的な何かがあるのかも、と。

大森:そうだね。じゃあ今日はそのあたりをもう少し深掘りしようか?

財部:よろしくお願いします。

大森:まず、ひとつの仮説だけど、上司を出せと要求したのに対し、上司が対応したので、目的を達成した、というもの。もしくは、年齢や役職からくる、相手方の安心感が増加した、少し時間が経ったことで冷静さを取り戻しただけ、というエスカレーションそのものの成果。

財部:はい、そういう要素も少なからずあるかもしれません。

株谷:ただし、IR領域では役職権限による説明内容の違いはないので、一般的なエスカレーション効果は比較的少ないという整理でした。

大森:通常のエスカレーションでは、「自分の権限では対処できない要求などの事案を上司に引き継ぐこと」「自分のノウハウ・知識、対応マニュアル等では説明しきれない事案を、より詳細な内容を説明できる担当者に引継ぐこと」「問い合わせ者が感情的になった事案を別の人間に引き継ぐこと」などが考えられる。けれど、IR分野に関しては、サービスや製品の技術的な説明などの特殊なケースを除けば、最後の感情のクールダウン効果しか、期待できないよね。

上場:そうですね。開示内ですものね。

大森:では、別の仮説は立つかな?

上場:室長は豊富な人生経験を活かした、聴くテクニックが高かった、というのはおかしいですか?

大森:正解~。

財部:正解ですか? それだとノウハウ取得は容易じゃないですね。

大森:まあ、聴くテクニックって、例えば、口調・トーンとか、相槌のタイミングとかいろいろあると思うけど、それだけではなくて…。

株谷:バックトラッキングや共感、言い換えなどですか?

大森:それもいいけど、まずはコミュニケーションテクニックを駆使して、問い合わせ者が本当に聞きたいことを炙り出す、そんな感じかな。

株谷:ひとつの仮説として、相手の質問・申し出の中に隠されている「本当に聞きたいこと、もしくは、言いたいこと」に焦点を当てた回答ができたから、相手の納得感が生まれた、ということですか?

大森:まさにそうで、二段階目ではそうして炙り出した聞きたいことを、言語化して提示する。

株谷:ふむふむ、そこが分かれば、あとは適切に答えるだけ…

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