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著者インタビュー

脱・消費されるコンテンツ 数値目標と得たい効果の両立を

奥山晶二郎氏

朝日新聞ウェブ記者の
スマホで「読まれる」「つながる」文章術

奥山晶二郎/著
ディスカヴァー・トゥエンティワン
256ページ、1650円(税込)

「バズるだけで良いのか?」、一度再考すべきかもしれない。どれほどPV数を稼ごうと、ただ消費されるコンテンツに意味はあるのかと。本書の主題は、読まれるだけではなく、ユーザーと“つながる”ためのスマホコンテンツのつくり方だ。つながりとは、例えば「商品を購入してくれる」「メディアから取材がくる」など。つまり、読み手の気持ちが変化して、それが何か行動として表れるということ。

そのためのネタの見つけ方、言葉の選び方、ユーザーとの関わり方などが、具体例を交えてまとめられている。また、これらのテクニックがなぜ有効なのか理解できるよう、マスメディアとPC・スマホの違いをはじめ情報空間の背景から解説する構成となっている。広報担当者はもちろん、宣伝・フリーランスなどデジタルコンテンツに関わる全ての方に参考になる内容だ。

スマホ台頭で数値競争の激化

「インターネットにより誰もが発信できるようになり、コンテンツの多様性は広がると思っていました。でも、実際はその逆。現在は、分かりやすい表面的な数値目標に縛られて、デジタルコンテンツの多様性を狭めています。またひと口にデジタルコンテンツといっても、PCとスマホの情報空間には大きな違いがあります。PCメインの時代は利用シーンが限定されていましたが、スマホの普及によりインターネットが暮らしに溶け込み、可処分時間の奪い合いが起こるように。その結果、広報・宣伝・販促といった企業活動は、エンタメやSNSなどスマホの中にある全コンテンツがライバルとなり、『とにかくバズるコンテンツが良い』とされるムードが醸成されたのです」。

このため、奥山氏はコンテンツの目的に沿った指標を置くことが大切だと語る。数値目標を担保した上で、別の角度から切り口を与え、本質や意義まで伝えることに成功した『withnews』の記事を見ていこう。

スマホ世代向けの好事例

ひとつ目の切り口は、「発想を変えて『古いもの』に目を向けてみる」。「新しいことが当たり前のデジタル空間に、【『あずきバー』なぜ固い?井村屋が明かす3つの理由「昔より固い」】というタイトルで誰もが知るロングセラー商品の記事を掲載しました。固さの理由を説明する中で、添加物を入れていなかったり、材料を厳選していたりする、製品のこだわりを伝えています。新着情報ではないが、商品の効果的なプロモーションにつながった事例でしょう」。

本事例のポイントは“社会との接点”だ。古いものの中にある普遍的で共感を得やすい“モノづくりへのこだわり”をコンテンツ化できた結果、ネタ消費に終わらず、真に伝えたい想いまで伝わった。視点を外に向け、消費者目線で社会との接点を見出そう。

2つ目の切り口は、「関心がある人の『口コミ』の熱量を大事にする」。「連載がきっかけでビジネスにもつながったwithnews内のSDGsの企画を例に紹介すると、『ターゲット』と『場面』を絞る手法が功を奏しました。SDGsは自分ゴト化しづらく、大きな数値を狙うのは難易度が高い。そこで企画の軸をSDGsに関心のある人だけに向け、長いスパンで確実に読まれ、忘れられない内容へとシフトしました。マスをターゲットにバズを狙うのではなく、ペルソナに刺さり、つながり続けるコンテンツを目指したのです」。

このように数値目標をクリアしながら、想いを伝えることに成功した本書の事例を参考にすれば、多様性に富んだ新たな広報施策が生まれるかもしれない。



奥山晶二郎(おくやま・しょうじろう)氏
サムライト取締役。朝日新聞社入社後、2014年に「新聞を読まない・スマホで情報を得る世代に届く」ウェブメディア『withnews』を始動。創刊編集長として開始5年で月間1億5千万PV達成、マネタイズにも成功。2022年から現職。

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