メンタリズムで日本一を極めた著者が、コミュニケーション法に応用したノウハウをまとめた本書。メンタリズムにより“自分の思い描くゴールに向けて相手を導き、望みを叶える技術”を紹介している。そもそも、メンタリズムとはマジックと同じパフォーマンスの一種だが、コミュニケーションにおいて相手が思わず興味を抱き、自ら動くように仕向けるテクニックでもある。言い換えれば、マーケティング活動における「興味・関心を引く」プロセスを、会話上の口語で実践するノウハウだ。
各章には、心理学を応用したメンタリズムのテクニックを中心に、その効果や具体的な活用シーンまで記載されており、読めばすぐに実践できる内容がずらり。心理学やコミュニケーション術の入門書としてもおすすめの一冊だ。
メンタリズムのテクニック3選
「タイトルに入れた“8秒”の数字には根拠があります。人間の集中力の持続時間は8秒であり、また人は8秒間見つめると好意を持つ、との研究結果が発表されています。つまり人間の集中力をフルに利用すれば、たった8秒で相手の心を掴み、興味や好意を引き出すことができます」と著者は話す。
紹介されているテクニックの中で、最も基本かつ重要なのは1⃣『相手に質問させる技術』だという。「メンタリストが人の心を読むためには条件があります。それは相手が聞く姿勢になっているかどうかです。逆に相手に聞く姿勢ができていない状況で、一方的に話を進めても警戒の感情しか生まれません」。そのために、まずは“ギャップ”や“違和感”を用意して、質問のきっかけをつくることが大切。
例えば、ビールメーカーの社員なのに「お酒、飲めません」と名刺に記すなど。相手が気になる仕掛けをつくり、“自分から話す”のではなく“相手から聞く”状況をつくることが、メンタリズムの第一歩といえよう。
次に、誰でもすぐに実践できる、2⃣『堂々と話せる呼吸法』を紹介したい。「話すテンポを遅くし、間をあける」「腹式呼吸を行う」の2点を意識することで呼吸が深まり、堂々と自信のある印象を手に入れるテクニックだ。同時に余裕が生まれ、自分の心を落ち着かせる効果もある。結果的に相手を深く観察できるようになり、会話を意図した方向へ展開しやすくなるだろう。
最後は、3⃣『「正直どう?」で本音を引き出す』テクニック。これは「実際のところ」や「率直に話すと」という言葉に置き換えても良い。正直に話すべき状況で嘘や建前を言うことに不快感を覚えるという、人間の性質を応用した会話術だ。「正直」の言葉を強調するなど、細かなポイントまで解説している点も本書の特徴である。
より良く魅せる演出を
広報活動も、自社の魅力を発信するより前に相手の頭の中にある質問を想定して、聞く姿勢を生み出すことから始めたい。「正しい内容だけでは、興味を持ってもらうことは難しい。相手を引きつけ、信頼関係を築くためには、広報でもより良く魅せるための演出が大切でしょう。そのために、本書のテクニックを活用してもらえたら」。
リリースひとつとっても、自社のサービスや商品の有用性を語る前に、トレンドや周辺知識を取り入れた記事はメディアに採用されやすい。これも相手が調べる手間を省き、興味を引くための演出と捉えれば、広報にメンタリズムを取り入れるイメージが掴めるはずだ。