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著者インタビュー

血の通ったつながりが、ウェルビーイングな組織を生む

西山直隆氏

こころのウェルビーイングのために
いますぐ、できること

西山直隆/著
BOW BOOKS
320ページ、2090円(税込)

ダイバーシティの推進や従業員のエンゲージメント向上など、人的資本経営の重要性が再認識されている今。個人が身体・精神・社会的に幸せを感じられる、ウェルビーイングな組織を目指す企業が増えてきた。

本書では、世界で実証されつつある「幸せになる理論」を実装する仕組みを解説。執筆の起点となったのは、資本主義や物質的な豊かさを追求することへの西山氏の違和感だった。

「お金も地位もある周囲のハイキャリア層が幸せそうに見えない。こころの病で仕事ができない知人もいる。そんな社会に違和感を覚えました」。そこで自分の得意なことなどを無償で人に贈り、その連鎖を生み出す“恩送り”の非貨幣コミュニティ「giv(ギブ)」を立ち上げた。フラットで純粋なエコシステムを構築する中での気づきを、本書にまとめた。

ウェルビーイングな組織づくり

「人間が幸せを感じるには、心と体の健康がプラスに作用するセロトニン、つながりが作用するオキシトシン、お金や成功が作用するドーパミン、これら3つの“脳内”ホルモンが関係します。まずは、健康やつながりで幸せの土台を固めることが大切です」。中でもオキシトシンは、本書のテーマ“こころのウェルビーイング”に直結する。

では、こころのウェルビーイングとはどのような状態か。ハーバード大学による「人の幸福と健康の要因」の研究では「幸せと健康をもたらすのは人とのつながりであり、良い人間関係を築いているかによる」ことが明らかになっている。つまり私欲のためではなく、他人を思いやり行動することで人生の目的や意味を見出し、幸せを感じることができるということだ。

このようなシンプルな理論を組織に実装するポイントは、「人材構成」と「文化の醸成」の2つ。「アダム・グラントの著書『GIVE&TAKE』では、人を『与えることを厭わないギバー』『得ることを好むテイカー』『ギブとテイクのバランスを取るマッチャー』の3タイプに分類します。このうちギバーには、相手により適切なギブを行う『他者思考型』と、リクエストがあれば誰にでもギブを行う『自己犠牲型』がいると考えます。後者はテイカーに搾取されることが多いため、誰もが安心してギブできる環境をつくるには、採用などの入り口でテイカーを排除することが大切です」。

またギバーが燃え尽きないように守り「人に頼ることが当たり前」となる文化の醸成も必要だ。その結果ギブする側が幸せを感じ、またギブされた側にも健全な負債感が溜まり、他の誰かにギブを返す“恩送り”の循環が回り出す。文字通り良い人間関係が生まれ、ウェルビーイングな組織へと生まれ変わる。

フラットなつながりの醸成を

ウェルビーイングな組織づくりに向け、採用広報では人材構成を意識した発信を、社内広報では文化の醸成・浸透を図りたい。また、社員同士が互いの好きなこと・得意なことを発見し合える簡易的なワークショップもおすすめだ。2人1組でインタビューを行い、異なるペアでそれを繰り返し、他己紹介で共有する。

恩送りの仕組みを体験できると同時に、互いの人柄を知る機会にもなるのだ。「ビジネスシーンにはない、血の通ったコミュニケーションは、ウェルビーイングな組織づくりのきっかけとなります。例えば趣味を知るだけでも『経理部の佐藤さん』から『日本酒好きの佐藤さん』に変わるはず。こうしたつながりを増やすことで、コミュニケーションが活性化し、相手へのギブが生まれていくのです」。



西山直隆氏(にしやま・なおたか)
1985年、兵庫県生まれ。米国公認会計士の資格を取得後、デロイトトーマツグループにてベンチャー企業の成長支援に従事。ウェルビーイングな社会を実装するため、givを設立。

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