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サイト翻訳入門

自治体公共サービスの情報を正しく在留外国人に届けて利便性向上へ

Supported by Wovn Technologies

「サイトの翻訳に手が回らない」。そんな広報担当者に向け、サイト多言語化の専門家が、ステークホルダーの満足度を高める翻訳のコツを解説します。

コロナ禍以降、社会全体で急速にデジタル化が進んでいます。その流れは民間企業に留まりません。政府は「デジタル田園都市国家構想」を掲げ5.7兆円の予算を取り、各自治体がデジタルの実装を推進しています。構想の基本方針のひとつには「誰一人取り残されない」社会の実現とあります。

生活に密着した情報の提供や緊急性の高い公共サービスの手続きがデジタル化すれば、地域住民にとっての利便性向上が期待できます。と同時に、自治体におけるコミュニケーションを考える上では、多様な住民への配慮も求められます。在留外国人が280万人にのぼる昨今、立ちはだかるのは「言葉の壁」です。

誤情報の拡散を防げ

各自治体のウェブサイトにおいて、外国語で情報提供を行う市区町村は、2022年で7割にのぼるという調査結果があります(総務省 自治体DX・情報化推進概要より)。しかし、実際にサイトでの情報提供の仕方を見てみると、ブラウザ翻訳ツールによる機械翻訳に頼る傾向が見られます。

機械翻訳は、技術革新によって一定以上の正確さを持つようになってきたものの、完璧ではないことを、広報担当者は理解しておかねばなりません。特に生活インフラや防災などに関する情報は注意しておきたいところです。

例えば、ある鉄道会社では、機械翻訳を使用したことで「堺筋線(さかいすじせん)」を「Sakai Muscle Line」(堺筋肉線)と誤訳。SNSで指摘が相次いだため、サイト公開を一時休止したことがありました。

ある自治体では、大雨で増水時の避難情報において、「増水しているので川に行け」と、本来の意味とは真逆のポルトガル語に機械翻訳されてしまったケースもありました。

緊急性が高いシーンでも多言語で正しい情報発信ができるように、あらかじめよく使うキーワードや地名の対訳用語集をつくっておき、他部門でも使えるように共有しておくと良いでしょう。多言語でタイムリーな情報提供が求められる際にも、用語集と機械翻訳の組合せによって正しくスピーディーな発信が可能になります。

また、機械翻訳の精度を高める手段のひとつとして、以前の連載でもお伝えした「ピボット翻訳」という手法も覚えておきたいところです。これは、日本語から英語へ人力翻訳した後に、英語をベースに多言語に機械翻訳する方法。日本語よりも英語を元にした方が機械翻訳の精度が高まるケースが多いのです。翻訳状況の一元管理もしやすいので、正確さとスピード感を両立するのにおすすめです。

そして、何語から対応すべきか優先順位をつけておくのもいいでしょう。地域の在留外国人の国籍によって、求められている言語は異なるはずです。また、地域に根ざす民間企業や大学、観光資源などによって、同じ国籍の方が多く集まるコミュニティも存在します。これらは優先順位を決めるひとつの指標になるでしょう。

図1 多言語化する際のポイント

言語切替で振り出しに戻る!?

多言語対応している自治体のウェブサイトであっても、ユーザーが欲している情報に素早くアクセスできているかどうか、使い勝手はどうか、という観点で見てみると、課題も浮かび上がります。

例えば、熱を出した子どものために病院の情報を探していて、目当てのページのリンクを入手し、言語切替ボタンを押した瞬間、なぜかその言語のサイトトップページに逆戻りしてしまう。こうしたユーザーが「やきもきするケース」は少なくありません。このような「振り出しに戻る」問題は、利用している翻訳ツールによるところが大きく、簡単に防ぐことが可能です。手続きや申請などのページは、使い勝手において不具合がないか見ておく必要があります。多言語でサイト内検索ができるようになっていると、さらに利便性は高まります。

知っているけど使えない

多言語での情報提供がうまくいっていないことで、利用できる公共制度のハードルが高くなっているケースもあります。

例えば、日本で就労する在留外国人は「ふるさと納税」を利用する資格がありますが、Wovn Technologiesが2022年に行った、日本で就労している在留外国人200名に対する調査によると、新たな側面も見えてきました。約58%が「ふるさと納税」を知っていましたが、制度の内容が分からなかったり、手続きの仕方が分からなかったりすることで、約81%が「使ったことはない」と回答。一方で9割が「サイト上で、充分な情報提供が多言語で展開されていたら利用者は増えると思う」と回答しました(図2)

図2 在留外国人のふるさと納税利用状況調査

出典:Wovn Technologies「ふるさと納税」の利用状況に関するアンケート調査

母国語で寄り添い伝える姿勢を

日本の自治体ウェブサイトにおける情報発信の現状は、「日本人向け」が主軸ですが、言葉だけでなくアイコンを添えてみたり、キーワードには英語を注釈で入れるなど、細やかな配慮で、正確性や安心感を高めることはできると思います。こうした工夫は、在留外国人に対して「あなたを受け入れています」というメッセージになることに加え、日本人の利便性も高めることができます。

自治体サイトや、交通など公共性の高いサービスのサイトについては、共通して抱える特有の課題もあるため、私たちも課題を集約し、翻訳サービスの向上に寄与していきたいと考えています。

Wovn Technologies
取締役副社長 COO
上森久之(うえもり・ひさゆき)

デロイト トーマツにて、新規事業/オープンイノベーションのコンサルティング、会計監査、M&A関連業務などに従事。公認会計士登録。2016年、Wovn Technologies COOに就任。2019年より取締役副社長。

Wovn Technologiesは、追加のシステム開発が不要のサイト多言語化サービスを提供する。サイト更新を検知し自動翻訳、デザイン変更もできる仕組み。世界中の人が、すべてのデータに、母国語でアクセスできるようにすることを目指す。https://wovn.io/ja

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