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地域・自治体の広報

新幹線開業に向け「3市町連携」職員交流の手応えと課題

大野貴宏氏(武雄市)、坂本龍太郎氏(嬉野市)、佐藤康二氏(有田町)、江上扶美子氏(有田町)

9月の西九州新幹線開業で注目が集まる佐賀県。停車駅が設けられる武雄市、嬉野市、そして近隣の有田町の3市町は、首長が連携会議を設置し、広域での誘客のほか、地域の活性化を図る事業にも連携して取り組む。現場の職員には従来とは異なる意識が芽生えて来たという。

武雄市
ハブ都市・新幹線課
大野貴宏(おおの・たかひろ)氏

西九州新幹線開業、移住・定住関連に従事。3市町連携会議の立ち上げから関わる。

嬉野市
企画政策課
坂本龍太郎(さかもと・りゅうたろう)氏

統計関連や移住関連に従事。2021年より3市町連携会議の事務。

有田町
まちづくり課
佐藤康二(さとう・こうじ)氏

地域交通の調整やコロナ対策交付金を担当。2021年より3市町連携会議の事務。

有田町
商工観光課
江上扶美子(えがみ・ふみこ)氏

3市町若手職員による共同プロジェクトに初期から参加、職員の取りまとめを行う。

「3市町連携」での意識変化

これまで

有田はやきもの、武雄と嬉野は温泉を軸にそれぞれの自治体がPRする

⬇︎

これから

他地区について職員が理解し、エリアでの魅力をPRする

地区の境界は観光に無関係

──「有田・武雄・嬉野地区連携会議」にかかわる事務局メンバーにお集まりいただきました。3市町連携に取り組まれている背景を教えてください。

大野:西九州新幹線の開業による観光客誘致を見据えた時、観光客目線で地域を見ると、自治体の境界線というのは一切関係ありません。魅力的なエリアがあれば、そこを訪れます。自治体ごとにPRする時代ではもはやなく、3市町をひとつのエリアとしてブランド価値を上げていきたい。そうした意識は以前からありました。しかし、自治体の枠にとらわれ実現できていない課題がありました。

そんな折、3市町の首長がいずれも年齢が近く、会合などで意気投合したことで、2019年、首長のリードによる広域連携での改革が決まりました。連携会議のメンバーは首長3名で、事務局は各自治体の企画と観光セクションの担当者6名。同年7月、首長が出席した記者発表会を開きました。そこで、首長3名から、観光分野でのPR連携や若手職員による合同プロジェクトの実施について発表し、企画がスタートしました。

──反響はいかがでしたか?

大野:武雄市の観光協会や施設等に連携の話をすると「武雄だけで、1泊2日や2泊3日の観光商品を組める時代ではないからね」と理解していただけました。観光消費額の増加につながる事業として前向きな印象を抱いてもらえたと思います。

佐藤:有田町には宿泊施設が多くありません。どうしても近隣の武雄市、嬉野市と連携して観光客の誘致をせざるを得ないという共通認識はもともとありましたね。

坂本:若手職員のプロジェクトが始まることが発表され、「面白そうな企画が始まった」という反応が役所内で起きていました。

キャッチフレーズは職員作

大野:連携会議の話が持ち上がってすぐに考えたのが、キャッチフレーズ。記者にも分かりやすく連携の取り組みを知らせるための言葉でした。若手職員からも多くの発案があり、言葉をリスト化して、事務局で案を絞っていきました。最終的に首長3名が決定したのは「ありったけのうれしいを。」3市町を連想させる言葉になりました。

江上:今では住民の方へ連携プロジェクトについてお話しすると、「あぁ、ありったけのね」と声を掛けられるようになりました。

大野:3市町共同で事業を行うにあたり、自治体の課題の中でも、特に連携の成果を出しやすい「観光の魅力増進」「エリアのブランド価値向上」を、第一目的とすることにしました。3市町の共通項を見ていくと、各地区ともやきものが特産品で、武雄市と嬉野市には温泉という共通の観光資源があります。これは、全国の皆さんにイメージしてもらいやすく、エリアとしての独自性があるものと考え、「器×食×健康」を軸とした事業展開を掲げました。

しかし、その後コロナ禍に...

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