本稿では、「学生と連携・並走する広報活動」の効果や意義について、3編に分け考察しています。前号では筆者の経験をもとに、主体的・自発的な学生広報チームのあり方や、その活動を通じて学生が得られる力について紹介しました。学生たちによって生み出される「学生視点のPRコンテンツ」は、主に受験生にとって親しみと共にその大学を知ることができる情報となり、中長期にわたって好影響を与えます。今号はそれらの具体事例やポイントについて掘り下げていきます。
受験生層の関心を集めるコンテンツ
一般的で、また始めやすい手法は、ブログやソーシャルメディアのようにテキストや画像で「学生の日常」を発信するコンテンツ(以下、「日常コンテンツ」)です。学生の等身大で自由な所感が発信され、アーカイブとして残ります。
例えば、受けている授業のことや履修時のコツ、下宿や通学事情、日々の食事、アルバイト、部活動、ボランティア活動など、教職員が伝えられない視点で日常が切り取られていきます。また、学生に公式Instagramの投稿の一部を任せるのも良い発想です。
広報誌やフリーペーパーも同様で、受験生層が「数年後の自分」を思い描けるコンテンツを作成できると効果的です。京都ノートルダム女子大学「学生広報スタッフ・マーガレット」が関わる広報誌「Margaret」や、滋賀県立大学の学生広報スタッフが多くのページに関わる広報誌「県大jiman」は好事例です。これらの日常コンテンツは、一般的な手法・観点ではありますが、私たち教職員が想像するより大きく受験生層の関心を集めます。ぜひ着目してもらえたらと思います。
大学広報を超えた学生支援
日常コンテンツ以外の情報も、主に受験生に向けて発信するものは「学生の顔」が見えるようにつくりあげると効果的です。
奈良県にある畿央大学では、学生のチカラを前面に出した取り組みを積極的に行っています。象徴的なのはオープンキャンパスでの学生との協働で、学生スタッフが来場者を受け付け、誘導し、コンシェルジュのように来場者ごとの案内や相談を行います。教職員はガイダンス講師や個別相談などを担当します。
学生たちが親身になり積極的にコミュニケーションを取ることで、オープンキャンパス来場者の約半数が畿央大学を受験する...