大学業界かそれ以外かを問わず、広報活動で大切なことのひとつは「手数(てかず)」だと、筆者は考えています。
「手数」とはすなわち、広報担当者としての立ち居振る舞いすべてのこと。記者と話す、記事を書く、コンテンツをつくる、情報をアーカイブする、人と人をつなぐ⋯⋯など様々挙げられますが、最終的にはそれらの動きや成果をどれくらい世に発信したかで初めて広報的な「手数」となるということを、本稿では強調したいと思います。
「発信」まで進めてこそ広報
大学や行政における「広報」の守備範囲の概念は、一般企業のそれよりも広くかつ曖昧です。ゆえに、「広報」と名が付く部局には実に幅広い課題やタスクが持ち込まれると思います。
そういった日常の中で、ただ「こなし」や「対応」で終わっては広報担当者として組織に貢献できる価値は半減です。広報は発信まで進めて「なんぼ」。まずはぜひ、そう心に留めてみてください。
とはいえ、予算も人員も少ないのが広報セクション共通の悩みです。そのような中でも、フレームやインフラを整理すれば情報は活発に出せる。そんな実践例を今号・次号でまとめてみます。
広報担当者の心得
和歌山大学で大学広報の仕事を始めたばかりの2010年のこと。当時の聖学院大学広報局長で、現在は2000人強の教育関係者有志が加盟する「学校広報ソーシャルメディア活用勉強会(略称GKB48)」を主宰する山下研一(やましたけんいち)さん(現・シンクアップ共同創業者)が、とあるセミナーでこうおっしゃいました。広報担当者の心得のひとつは「息をするように発信する」こと。筆者は心から共感したことを覚えています。
大学は話題と情報の宝庫です。研究成果、教育プログラム、クラブ活動、そして熱意ある教職員や活気ある学生の内面や取り組みなど、学内をくまなく歩いて目をよくこらせば様々な情報に出合うことができます。
まずは、それら情報を「息をするように発信する」ために、発信媒体の立ち上げや、どの情報をどの媒体で発信するかの整理を行うと良いと思います。
発信媒体を考える
大阪公立大学の前身校・大阪府立大学では、教育や研究の成果に関する...