新たな価格の発表は、蓄積してきたブランド資産の毀損にもつながりかねない。そんな時こそ、一貫性のある姿勢、丁寧な発信による、企業ブランドの構築が問われていく。目指す姿が正しく認識されているか、ステークホルダーとの接点を見直しておきたい。
値上げを発表する企業が相次いでいる。価格改定に関するプレスリリースを見ると、「原油価格の高騰や国際情勢の混乱を受け、原材料の価格や包材、輸送コストが上昇している」などと、その背景を記載しているものが目立つ。さらに「企業努力で価格維持に努めてきた」ことを示しつつも、「従来と同品質を保つことが厳しい状況となり、価格改定に至った」などと締めくくられている。こうした値上げは、生活者が抱く企業に対するイメージにどのような影響を与えるのだろうか。
値上げはブランド毀損に
「値上げは、消費者に痛みを強いるものです。これまでの企業活動を通して蓄積してきたブランド資産を毀損することになるのです。その毀損を最小限にする努力は必須でしょう」。こう話すのは、『100円のコーラを1000円で売る方法』などの著書がある、マーケティング戦略コンサルタントの永井孝尚氏だ。
「現在は報道などによって、原材料などの高騰が社会的に広く共有されています。ここで企業が透明性のある説明をすることは、誠実に訴求する機会ともなり、ブランド資産の毀損を最小限にとどめられる可能性が高いと思います」。
苦渋の決断と企業姿勢
一方で、内容量を減らして価格を維持し、実質値上げをするケースも見られる。ステルス値上げともいわれるが、これに関しては、「消費者は意外と気づいている」と永井氏は指摘する。
プライシングスタジオが2022年4月に実施した「ステルス値上げに関する調査」(回答数341)によれば、ステルス値上げが増えていると感じる人は69%。年代別に見ると「不快に感じる」と答えた人は、26~35歳が最も多かった(62%)。
「ステルス値上げを『不快』と思っている人にとっては、生活者に気づかぬように損失を与える企業は誠実ではない、という印象を与えますから、ブランド資産が毀損します。値上げは、企業にとって苦渋の...