企業ブランディング、と言っても、いったい何から始めたらいいのだろうか。まずは、企業ブランディングが必要な理由や企業イメージを高めるために、広報担当者に期待されている役割について考えていこう。
Q1 なぜ今、企業ブランディングが必要なのか?
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A 単品で勝負せず、企業自体のファンをつくることで、長期の関係構築が可能に。
商品・サービスの入れ替わりサイクルが早まっているため、一方的な商品提供だけでは、ステークホルダーとの長期の関係構築が難しくなっています。そこで注目されてきたのが、「企業全体で、顧客にどのような体験を提供していくか」という視点です。ここ数年、大手メーカーが、コーポレートブランドを司る専門部署を立ち上げる動きも見られます。単品の値段を上げ下げして勝負するのではなく、企業自体に良いイメージを持ってもらい、企業ファンとの関係構築を強化しようとしているのです。
ESGやSDGsの観点から商品ブランドに横串を刺し、企業ブランドの傘下でどう売るかに舵を切っている外資系企業もあります。2022年は物価の上昇も起きていますし、企業ブランディングを重視する考えは、今後も進んでいきそうです。
企業姿勢に賛同する生活者
一方、生活者の側は、SNSというツールがあることで、企業を応援しやすくなっています。例えばコロナ禍当初、社会が混乱を来たしていた中で急遽マスク生産を始めた企業に対し、その姿勢を称賛する投稿が集まりました。牛乳余りで消費を呼び掛けた企業に対しては、それに賛同する投稿が自然発生的に生まれています。
かつてブランド構築と言えば、企業が発信する一方的なメッセージを生活者に感じとってもらうことでしたが、情報環境が変化した現在、生活者が自発的に企業に関して語りたくなるような文脈や体験がつくり出せれば、SNS上での伝播も期待できます。それが企業に対する良いイメージにつながるのです。
使って終わりの商品に比べると、企業に対しては人格を感じやすいところもあります。企業には従業員がいて、その営みには物語が生まれるからです。
また、リスクの面から見ても、商品のイメージアップだけを考えていては、立ち行かない状況になっています。例えば、ウクライナ侵攻による人道危機やウイグル人権問題をめぐる企業姿勢から、「この企業の商品は、もう買わない」といった不買も起きています。
Q2 企業ブランドが崩れるのはいつ?
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A これまで蓄積してきたイメージを裏切る言動をとった時。
企業活動を通じて脈々と蓄積してきたイメージを、いきなり裏切るような行為に出ると、「急に路線が変わった」とネガティブな反応が起きやすくなります。企業の歴史と向き合い、「裏切らずにメッセージを出し続けているか」について、トーン&マナーも含めてコントロールしていくことが大切です。当然ながら、企業イメージは一度つくったら終わりというものではありません。
昨今はSNSによって、企業の一貫していない言動に対する批判も見えやすくなっています。顧客はレビュアーであり、インフルエンサーでもあります。顧客ではないけれど発言に影響力がある人もいます。そうした人たちも広く相手にしながら、企業に対するイメージを高めていく取り組みをしていくんだ、という認識が必要です。
失敗と成功は表裏一体
ブランディングの失敗と成功は表裏一体、というのも覚えておきたいことです。例えば「デザインが好きで商品を買ったが、サイズ変更に時間がかかり、環境問題に対する対応にもがっかりした」という体験。これを裏返せば「デザインが好きで商品を買ったが、サイズ変更の対応も素早く、環境に対して配慮した経営をする企業だと知り...