日本唯一の広報・IR・リスクの専門メディア

IRの学校

社外取締役の選定【後編】

大森慎一(バンカーズ)

広子はIR担当として、忙しくも刺激的な日々を送っている。知り合いのベンチャー企業が社外取締役を招へいした話を聞いてその役割や選定の方法を大森さんに相談することに。


広子東堂:こんばんは。

大森:こんばんは。

東堂:前回のお話の続きからお願いします。社外取締役の候補として選定するための基準・プロセスを考えましょう、という話でしたよね。

広子:まずは、社外取締役はガバナンス強化の役割が大きいので、その役割を理解しているということが必要条件である、というまとめでした。そのうえで、取締役に求められるスキル・マトリックスとして、あるべき姿と現状をフィット&ギャップ的な手法で補完しましょう、ということでいいですか?

大森:いいね。じゃあ、まず、そのスキル・マトリックスに関してだけど、これはどんな立て付けになっているんだっけ?

東堂:はい、調べてきました!コーポレートガバナンス・コードに「取締役会は、取締役会の全体としての知識・経験・能力のバランス、多様性及び規模に関する考え方を定め、取締役の選任に関する方針・手続と併せて開示すべきである」とあります。この開示のために、役員が保有する知識・経験・能力を一覧表にしたものですね。

大森:そうだね。「開示のために考え方を定め」という風に、例によって、スキル・マトリックスも簡単なテンプレートで対応すべきではなく、自社の状況を勘案して、必要な一覧表を作成するところから始まるんだよね。

広子:やっぱり、そうなりますよね⋯⋯。

大森:ハハハ!コーポレートガバナンス・コードを制定した目的の中には、形式主義に陥らず、自らの状況を深く思考させて、対応させること自体も含まれているからさ、お付き合い願おうか。

広子:は~い。では、スキル・マトリックスの整理からですね。

社外取締役へ期待

大森:順番からいうと、最初は社外取締役の招へいの目的を、具体的にすることから始めようか?

広子:なるほど。一般的な目的だと、形式的な着地になりますものね。具体的には、う~ん⋯⋯ここは社長に確認するところでもありますね。例示するなら、どういう内容になりますか?

大森:例えば、「経営計画そのものの強化」「リスクマネジメントのサポートやサジェスチョン」など。ベンチャー企業なら、候補者の人脈そのものが目的かもしれないね。

広子:なるほど、なるほど。

大森:中期経営計画や経営理念実現のために定めた「経営の重点課題」や「対処すべき課題」を基に、サポートしてもらうべき項目をリストアップしてもいいね。これらは1年単位ではなく3年から5年の期間で考えているだろうから、任期も揃えるといいかもね。

東堂:取締役の任期は一般的に1年から2年ですよね。

大森:ただ、それはそう。果たす役割を考えると1期で交代はないよね。

広子:それは理解できます。

大森:社内の取締役は短期的な目標への結果責任も検証すべきだけど、社外取締役は経営の監視とともに、経営理念や中期経営計画など、中期的な目標達成を目的に活動してほしいという違いはあるね。形式的な任期はともに1年から2年だけど、社外取締役には中期的な期間を想定してお願いしていいと思うよ。

専門性と目線・視野

大森:次に、スキル・マトリックスを作成する段階だね。

東堂:企業の主な業務プロセスである研究開発、生産・製造、マーケティング・販売、海外展開、法務、人事などといった業務範囲ごとに、必要なスキルをまとめていく、というように想定していました。

広子:先ほどのアドバイスを受け、自社の状況を勘案した重点項目的な要素を加えてみようと思います。自社の成長や競争力を保持し続けるのに必要なスキルを重点的に考える、ということになりますよね。

大森:いいねえ。その段階で少し提案があるよ。

広子:えっ、なんでしょう?

大森:業務プロセスごとに検討を加えるのと並行して、目線や視野という概念でも、必要な要素をピックアップすることを検討してみたらいいと思うんだ。

広子:目線や視野ですか?なんとなく、分かるような分からないような⋯⋯。

東堂:目線というと、「どんな立場でものを見るか」という意味ですか?

広子:そうね。視野というと、広い・狭いと表現されるから、視界の広さ、考慮すべき領域の広さ、みたいな話でしょうか?

大森:そうそう。プロセスごとの専門性も必要な観点だけど、例えば、社会的な目線、一般消費者としての目線、グローバルな目線など、いろいろな立場で物事を見ることができたり、マクロ的な視野に広げたり、逆にミクロな視野に特化して、物事を判断できることは、多様性や柔軟性、粘り強さ・耐性に富む会社経営につながると思うんだよ。

東堂:「鳥の目、虫の目、魚の目」のバランスを、ってことですね。

広子:「魚の目」はトレンドを読む視点だっけ?

大森:目線が高ければ視野も広いし、先も見通せるという一般的には相関関係にあるけど、トレンドを読むには、より高い専門性も必要。そうすると、場合によっては視野というか担当領域が狭まるかもね。なので、専門性と目線・視野を別々の角度で求められるスキルを整理するとよい、という話だね。

広子:なるほど、なるほど⋯⋯そういう意味では...

あと60%

この記事は有料会員限定です。購読お申込みで続きをお読みいただけます。

IRの学校 の記事一覧

社外取締役の選定【後編】(この記事です)
社外取締役の選定〈前編〉
IR担当者のキャリアアップ【後編】
IR担当者のキャリアアップ【前編】
コーポレートガバナンス・コードの改訂

おすすめの連載

特集・連載一覧をみる
広報会議Topへ戻る

無料で読める「本日の記事」を
メールでお届けします。

メールマガジンに登録する