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IRの学校

IR担当者のキャリアアップ【後編】

大森慎一(バンカーズ)

広子はIR担当として、忙しくも刺激的な日々を送っている。勉強会メンバーから転職の話を聞いた広子。IRのキャリアアップとはどういうことなのか、考えている。



大森:キャリアアップを考える際に即戦力となり得るには、培ってきたノウハウやIRスキルは応用に通用するレベルかどうかが重要だね。

広子:しれっと怖いことおっしゃいますね⋯⋯。これまで培ったノウハウでも、基礎から学んでいないと、通用しないってことですか?

大森:言いたいのは、理論を勉強するという意味ではなく、業務の基礎構造、業務の流れや成立ちをきちんと理解している、ということ。

広子:はあ、業務の基礎構造ですか。

仕事の連携と業務分担

大森:前回、IR業務が専門的で限られた領域だという話をしたけど、独立して完了する仕事ではないよね。

広子:そうですね、他部署との連携が必須になりますね。

大森:IRに持ち込まれる、もしくは集めてくる情報や素材は、別の部署の誰かが収集したり、評価を足したり、作成したりしている。

広子:ああ、なるほど!素材の状況が違うというのはそういうことですか。あの部署からの情報はエビデンスもしっかり確保されている、この部署からの情報は図表もあって分かりやすいとか、情報の状態は確かに違いますね。最初にIR業務に就いたときのことを思い出します。

大森:ほうほう。

広子:この勉強会に入って様々な人に話を聞いて、分かった気になって。いざ作業をしようとすると微妙なところが聞いた話と違っていて、また聞き直しての繰り返しで、苦労しましたねえ。

大森:素材の状態の違いはそんな感じだ。会社によって違うけど、IRの求人社だと、まだまだ業容が小さく、組織も細分化されてなくて一人ひとりの業務内容が広い場合が多い気がする。業務の分担も属人ベースの能力、経験で決定しがちなので、その会社特有の業務分担ができていることもあるだろうね。

広子:ああ、そういえば、B子さんが、「前職では他部署がやっていた業務も、今は全部自分でやらないとダメなのよ」って、愚痴ってらっしゃいましたね。

大森:ああ、あるあるだね。というわけで、前職で培ったノウハウが、そのままでは活かしきれない場合が発生するってことだよ。適応できればいいけど、そうでないと「即戦力」と期待していただけに、評価は必要以上に下がるよね。

広子:厳しいですね。

大森:そして、細かすぎる分担の話だから、求人者側とじっくり話さないと分からないことが多いから、やっかいだよね。

広子:なるほど。B子さんは「前の会社では。〇〇だった、というのは禁句よ」ともおっしゃってました。つい口にすると、周りの反発が手に取るように感じるので、注意しているって。

大森:う~ん、禁句とも言えるし、そうでないとも言える。

広子:前の会社と比べられると、今の会社の人たちは嫌だと思うのは自然だと思うんですが⋯⋯。

大森:そうだね、確かに単純に「前の会社は〇〇だった」で終わると、批判に聞こえがちだよね。

広子:どうすればうまくいくんですか?

大森:そこで基礎の話だ。IR業務の流れを広い範囲で一通り理解している、という意味でね。頭に整理されていれば、自分ができる得意な業務領域の周辺、特に前工程や後工程の業務内容をある程度は、ポイントを押さえているだろう。そうすれば、新しい組織であっても、協力しあう周囲との業務分担を調整できると思うよ。

広子:ああ、なるほど。

大森:前の会社との比較は、業務のすり合わせのために具体例として提示したり、効率化のための提案まで通すなら問題はないと思うよ。

広子:会社をよくするために、ですね。

大森:その通り。B子さんの言葉を引き合いに出してしまうけど、「今は全部自分でやらないとダメなのよ」で留まっていることはいかがなものか、と問いたいね。もちろん、その分担が組織の最適解なら問題ないし、入社当初ならしばらくは様子見だと思うけど、しばらくやってみて、改善できると考えるのであれば、積極的に改善提案するのも、新規参入者の役割のひとつだと思うし、居場所を掴むためにも必要な作業だと思うよ。

設計と運用ノウハウ

広子:なるほど、私の場合は、新規上場のタイミングでIR業務に携わったので、一からつくった感がありますが、それはそれでいい点もあったんですね。

大森:行動力にあふれる広子さんには、適した環境だったと思うよ。

広子:ありがとうございます。私の場合は新しい組織が向いている、ということなんですかね~?

大森:う~ん、条件によるかな?

広子:条件ですか?

大森:求人社にIR業務の設計ノウハウを持つ人材がいるのか、という点と時間的な猶予がどのくらいあるのか、タイミング的な要素によるかな。後は上司の寛容度合いだね。

広子:私には寛容で設計ノウハウを持つ上司と、時間的な余裕が必要ってことですか⋯⋯?私には何があるんでしょう⋯⋯?

大森:失敗を恐れない推進力と知らないことを知らないと言える勇気、それにIR業務の運用ノウハウ、特に臨機応変な対応力と巻き込み力という武器があると思うよ。

広子:おおっ!それを磨いていけば、いつかはジャンプアップの可能性があるってことですね。

大森:そもそも、キャリア的には設計ノウハウが求められると思うけどね。

広子:確かに他人に聞いて整備している私には、基礎も設計ノウハウも...

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