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IRの学校

コーポレートガバナンス・コードの改訂

大森慎一(バンカーズ)

広子たちはIR担当として、忙しくも刺激的な日々を送っている。新年度もスタートするなか、話題は6月ごろに改訂を予定しているコーポレートガバナンス・コード、スチュワードシップ・コードに……



広子東堂:こんばんは。

大森:こんばんは。新年度も本格稼働って感じかな。

IRのコロナ対応はどうなる?

広子:コロナはなかなか落ち着きませんねえ。このまま常態化すると思った方がいいんですかね。

大森:そう考えて準備するしかないんだろうね。IRの業務領域でのコロナ対策で、無駄になりそうな準備は少ない気もするしね。

東堂:会社説明会のリモート開催は地方訪問の代わりに定例化するかもしれませんし、会社法改正もあって、株主総会のオンライン対応も一層進んでいますしね。

広子:各地方での会社説明会、楽しかったのにな⋯⋯。

大森:地方名産を味わう方向で?

広子:そういう面も否定できません(笑)。でも、社会全体の基礎的な、根本的な考え方が変化してきてはいますよね。

大森:テレワークやリモート会議、副業などを筆頭にした働き方、脱ハンコ文化など「変えよう」と声高に言われながらも停滞していた事項が、否応なしに進んだ感があるね。

広子:情報開示分野でも、CSR、ESGにSDGs、人的資本活用やらDXと次々と新しい概念・キーワードが出てきて、対応状況を整理するだけでも大変なのに、コロナ対応で伝達手法の工夫もしなければいけないので、大変です。

東堂:そういえば2021年はコーポレートガバナンス・コード(CGコード)もスチュワードシップ・コード(SSコード)も改訂されますね。

広子:そうそう、なんでこんな時期に改訂して、仕事増やしてくれるかなあ⋯⋯。

大森:まあまあ、そう言わずにきちんと整理しておいた方がいいね。

東堂:IR分野のキーとなるテーマについては、一通り対応していると思うのですが、コード2つは基本的に経営企画で対応していて、我々は開示の担当として関わっているだけなので、本質的なところが整理できていないかもしれません。

広子:改訂というからには、今までのものではなぜダメだったのかを改めて整理して知りたいですね。

大森:では本日は、両コードの話を少し整理していこうか。

広子東堂:はい、お願いします。

コードの主な改訂点は?

大森:まず改訂する理由だけど、コードのどこが悪い、という話ではない。CGコードは、その成り立ちから「主要な原則を取りまとめたものであるが、不変のものではなく、目的を果たし続けることを確保するため、定期的に見直しの検討」を行うものとしているからね。

広子:そこは理解しますが、具体的にはどんなところが変更点ですか?

大森:まとめると、①取締役会の機能発揮 ②中核人材における多様性の確保 ③ESG要素を含み中長期的なサステナビリティをめぐる課題への取り組みとなるかな。これらについて、原則と補充原則などの該当する箇所が変更されている。

広子:取締役会が機能していないから、もっと頑張れってことですか?

大森:ちょっと、トゲが⋯⋯。さっき、広子さんは「こんな時期に」と表現したけど、まさにこんな時期だから、という部分はあると思うよ。コロナはまさにパラダイムシフトを全社会的に起こしたとも言える。今後も競争ルールが変化するかもしれない。従来型の社内勝ち組を集めた取締役会は「均質な組織」で、「競争環境が安定している社会」では強かったけれど、今後のルールチェンジには対応しきれないかもしれないということだね。

開示関連に絞ると、①中核人材の多様性の確保に関する考え方(人材育成方針、社内環境整備方針など)、目標、その状況 ②サステナビリティへの取り組み ③各取締役のスキルマトリックス(専門知識や経験をまとめた一覧)の状況 ④事業ポートフォリオの方針などについて、開示すべきだという形で具体的に示されているね。

東堂:従来から開示すべき要素がより明確に言及された印象が強いのですが、取締役のスキルマトリックスに関しては、新しい要素ですか?

大森:そうだね。まさに未知なるリスクには取締役を中心とした中核人材の多様化が求められる、ということで盛り込まれたんだと思うね。

株主との直接対話の役割

広子:そのスキルマトリックスにしても、例示だけじゃなくて、もっと具体的なスキル内容を決めてくれると話が早くて楽なんですがね。

大森:広子さん、なんか今日は「具体的に」が多いね?

広子:だって、具体的に基準を示さないで、各社が考えるべきって、何か逃げている気がして。

大森:ごもっとも。だけど、そこが両コードの制定における根幹の考え方にも通じるところなのでね。

広子:あっ!

大森:「プリンシプルベース(原則主義)・アプローチ」と「コンプライ・オア・エクスプレイン」の手法を採用したことは覚えているよね。「プリンシプルベース・アプローチ」の意義は、一見、抽象的で大掴みな原則を示すから、各社がその趣旨を確認し共有した上で、形式的な文言・記載にとどまらず、適切に判断して対応するところにあるよね。その上で原則を実施しない場合には、その理由を説明する、ということが加わっている。

料理のレシピのように、手順を示してほしいというのは理解はできるけど、料理と違って各社の目指す完成形、企業理念は違うし、持っている素材、中核人材...

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