ブログや掲示板、ソーシャルメディアを起点とする炎上やトラブルへの対応について事例から学びます。
まん延防止等重点措置が適用中の大阪にある近畿大学の学生でいっぱいになった教室の写真が、4月7日Twitterに投稿され、広く拡散された。「フル定員での教室使用なのでこのような密集状態となっています」と書かれたその投稿は、近畿大学教職員組合のアカウントからだった。
組合は、教室定員を抑えない大学の方針を問題視し、過去に学内でクラスターが発生したことなども挙げて、教室定員の抑制を求めるとツイートした。
複数のネットメディアがこの動きを報じた。大学側は対策会議を設けたことや、対面授業にあたり教室に換気扇や二酸化炭素濃度計を配置するなど感染対策を強化していることなどを伝えている。また、結果として、翌週1週間の講義を休校にし、その後は一部をオンラインに戻すことを決めたという。
情報収集の機能充実を
新年度でSNS活用を見直す組織も少なくないだろう。今回はそんな時に踏まえておきたいポイントを見ていきたい。多くの組織が情報発信ツールとしてSNSを使い始めるが、最近語られることが多いのは情報収集の役割だ。
2、3月に4件のシステム障害を起こしたみずほ銀行の問題について、みずほFGの社長は記者会見で、初期対応が遅れたことの反省として、情報収集が極めて重要でSNSから社内共有までをしっかり見直したいなどと口にした。
4月1日に新たに設立されたTOKIOの公式アカウントは、偽アカウントの出現に注意を促している。YouTubeの偽アカウントが同日出現。公式サイトの動画と同じものが投稿されて12日現在、再生回数7万回超となっている。
福島、宮城両県で震度6強を観測した2月の地震後に開いた官房長官の会見の画像が、改ざんされてTwitterに投稿されていたことが分かり、政府はTwitter社に対応を求めて削除されていたと4月に報じられた。笑っている表情に加工して「不謹慎だ」などのコメントとともに拡散されていた。実際の放送では笑っている場面はなかった。
冒頭の近大の例も含め、どれもネット上の情報を入手し、素早く対策につなげる重要性を考えさせるものだ。
対策までのリードタイム削減
情報を入手し、組織内で共有、対応を決めて対策を講じるという流れの中で、広報として重要なポイントは2つある。リスクの高い情報を見つけ出して対応の必要性を強く訴えることと、対応策としての情報発信までのリードタイムを短くすることだ。
対応が必要な場面で、組織として静観(放置)とするのは、長い目で見るとダメージが大きい。この悩みを持つ広報担当者は少なくないが、注意喚起の方法を工夫することで、対応の必要性を諦めずにしっかり伝えていきたい。またHPのページ作成や公式コメントの発信にかかる時間削減にも取り組みたい。いざという時に、いかに短い時間で対応できるかが腕の見せ所だ。それは日ごろからの積み重ねが生む大きな差でもある。
社会情報大学院大学 特任教授 ビーンスター 代表取締役社会情報大学院大学特任教授。米コロンビア大学院(国際広報)卒。国連機関、ソニーなどでの広報経験を経て独立、ビーンスターを設立。中小企業から国会までを舞台に幅広くコミュニケーションのプロジェクトに取り組む。著書はシリーズ60万部のベストセラー『頭のいい説明「すぐできる」コツ』(三笠書房)など多数。個人の公式サイトはhttp://tsuruno.net/ |