ブログや掲示板、ソーシャルメディアを起点とする炎上やトラブルへの対応について事例から学びます。
NTTドコモとKDDI(au)のサイトの解約手続きを案内するページに、検索エンジンで非表示にするタグ「noindex」が記述されていたことが、2月、総務省の有識者会議で明らかになった。これが「回線解約ページを検索エンジンから隠ぺい」などと報じられた。auでは2020年12月、ドコモは2021年1月に、ページからタグを削除したと言う。ソフトバンクはもともと記述していなかった。
報道によると、noindexタグが使われていたことについて、ドコモは「先に別のプランや解約に伴って使えなくなるサービスの情報を提示すべきと考えていた」、auは「該当のページは情報量が多い。解約したい人が手続き方法を案内するページに直接アクセスできるようnoindexタグを設定して、表示されないようにしていた」と説明したことが伝えられている。
正直なところ、それぞれの説明には少し無理があるように感じるが、注目したいのはそこではない。今回この問題を取り上げたのは、広報がいつ、こうした情報を掴み、どのように対応を進めるのか?を考えるためだ。
外部の指摘から始まる
ページ内にnoindexタグを埋め込むのは、意図がなければ発生し得ないが、広報にその意図が予め共有されているということは残念ながら考えにくい。広報としては、外部の指摘を受けて認識するというのが一般的ではないか。
今回の場合も、携帯電話の乗り換えを円滑にする環境実現を目的に設置された、総務省のスイッチング円滑化タスクフォースによる指摘で明るみに出た。また、総務省が公表したのは、タグの存在が分かった時点ではなく、タスクフォースの指摘によってドコモとauがページを修正した後だった。これがもし、ネット上の誰かがページ修正する前に追及していれば、炎上につながっていた可能性も十分ある。そうなった時には、上の説明では沈静化しないことも考えられる。
隠ぺいか?ターゲティングか?
1月、米国バイデン大統領の就任に合わせ、ホワイトハウスの公式サイトが新しくなった。その際、サイトのソースの中に、「これを読んでいるあなたがサイト構築を助けてくれることを、私たちは望んでいます」というメッセージが記述されていることをメディアが報じた。応募ページのURLも書かれていた。ブラウザでサイトを見ているだけの一般ユーザーは、決して気づかない、特定のターゲットに向けたメッセージだ。
とかく広報は、メディアなど大勢の人たちが目にする場所でのコミュニケーションを意識することが多いが、特定の対象に向けた、一般には見えないやりとりもまたコミュニケーションである。広報の役割としては、それが隠ぺいなのか、ターゲットを絞った発信なのかをその特性から短時間で理解し、しっかり説明できるようになっておくことが重要だろう。
社会情報大学院大学 特任教授 ビーンスター 代表取締役社会情報大学院大学特任教授。米コロンビア大学院(国際広報)卒。国連機関、ソニーなどでの広報経験を経て独立、ビーンスターを設立。中小企業から国会までを舞台に幅広くコミュニケーションのプロジェクトに取り組む。著書はシリーズ60万部のベストセラー『頭のいい説明「すぐできる」コツ』(三笠書房)など多数。個人の公式サイトはhttp://tsuruno.net/ |