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広報担当者のための企画書のつくり方入門

「中小企業・ベンチャー企業」の広報の企画書を書きたい!ポイントは?

片岡英彦(東京片岡英彦事務所 代表/企画家・コラムニスト・戦略PR事業)

「広報関連の新たな企画を実現しようとしても、社内で企画書が通らない……」。そんな悩める人のために、広報活動の企画を実現するポイントを伝授。筆者の実務経験をもとに、企画書作成に必要な視点を整理していきます。

本質がつかみにくい中小・ベンチャー企業の広報の悩み

中小企業やベンチャー企業から広報活動の相談をいただくことがある。依頼主が経営者のことも多い。この場合、気をつけているのは「本当に『広報』についての相談かどうか」という点だ。

ある経営者からの相談は「自社に広報活動を行うチームがなく経験者もいないので、どう採用したらよいか?」だった。これは広義の広報活動かもしれないが、社内組織や人事(採用・研修)の話である。『ガイアの夜明け』に出演したいという相談のこともある。もちろん企業や商品のアピールの一環で経営者自身が登場することもありだと思う。しかし今この企業が行うべきは、特定の番組の出演ではなく、骨太の中長期的な戦略立案では?と思う時は率直にアドバイスさせてもらう。

広報活動の企画立案の手法に、企業規模は関係ないが、中小・ベンチャー企業だからこそ配慮すべき課題は多い。中小企業やベンチャー企業が行うべき広報活動とは何か。どうやって企画書を書けばいいのか、まとめてみたい。

視点1
今、必要なのはどういう広報活動か、を見極める

広報活動の目的は何か

中小企業やベンチャー企業からの広報活動についての相談の多くは「攻め×外向け」(図1)のものだ。もちろん例外的にインターナル広報(攻め×内向け)や危機管理広報(守り×外向け)の依頼もある。しかし大企業のようにコミュニケーション部門が細分化され縦割りになっていることは少ないため、1人の広報担当者が多くの範囲の業務を担当している(図2)。このため中小・ベンチャー企業における広報部門が最優先する課題は「売上を上げる」に集約されることが多い。

図1 企業の広報活動 4つのタイプ

出所/著者作成

図2 広報部門の役割 大企業と中小・ベンチャー企業の違い

大企業のコミュニケーション関連部門

●広報部(広報担当)=PR/パブリシティ

●IR部(IR担当)=IR・株主総会

●ブランド推進部(ブランド戦略担当)=コーポレートブランディング/ブランドキャンペーン

●宣伝部(出稿担当)=商品広告・商品PR

●販促部(販促担当)=商品ポスター、販促グッズ、チラシ、看板

●デジタルPR部(オウンドメディア担当)=Webサイト、SNS、メルマガ

●人事部(採用担当)=会社説明会・就活メディア

●インターナル広報(社内広報担当)=社内報・全社集会

●法務部(リスクマネジメント)=危機管理

➡広報部としての活動は主に「パブリシティ活動」である


中小・ベンチャー企業の広報部門

●広報部(パブリシティ、IR、広告、販促、Webサイト、SNS、採用広報、社内広報、危機管理⋯)

➡広報部は自社が行うあらゆる「コミュニケーション活動」を行う

活動の目的を見失わないように注意!

中小・ベンチャー企業の広報担当者が企画書を書く際、まず気をつけたいのは、自分たちが社内で「広報活動」と呼ぶ業務が、一般的にどういった位置づけにあたるのか、という「視点(目的)」の確認だ。広範囲の広報業務に対応している場合、今自分が行っている仕事が、自社のコミュニケーション戦略全体の中でどの位置にあたるのか、活動の「目的」を見失いがちだ。

例えば、自社の魅力を業界内に訴求する(コーポレートブランディング)目的で行う広報活動のはずが、消費者への新商品の認知拡大(販促)の視点が強すぎたため、目的が果たせなかった。こんなことがよくある。業務範囲が広い中小・ベンチャー企業の広報担当者は、企画書作成時、繰り返し「目的は何か?」に立ち戻る必要がある(図3)。

図3 広報活動の目的を見失うパターンの例

課題 自社の知名度が低い。業界内でのプレゼンス(影響力)を上げたい

施策 大規模な展示会に出展参加

実施 せっかくの機会だと思い「新商品」のアピール

⬇︎

結果 消費者から商品は注目されたが、業界内での自社の認知は上がらない

視点2
「実施規模」の適正化を図る

実施の規模は適正か

目的を見失わずに企画書を作成した場合も、中小・ベンチャー企業の広報で難しいのは、実行の「規模」をどうするかだ。もちろん実施の規模感が大きいほど効果も出る。しかし多額の費用はかけられない。結果として企画書の時点で、期待される広報効果に比べ、実施規模が小さすぎることも多くある(図4)。その場合、①「規模を見直す」(予算に余裕があれば)②「実施をやめる」(現状では効果なし)③「違う手法で行う」(より効果的な方法を考える)の対応が必要となる。

図4 広報活動の「規模」を見誤るパターンの例

課題 新商品の認知拡大(商品PR)

施策 都内の新商品発表会で開発者が登壇し商品を説明

実施 業界メディアなどが参加

⬇︎

結果 日頃から付き合いのある業界紙への掲載があったが、潜在顧客への認知拡大には至らず

施策に多額の費用をかけることが難しい場合は「確度は低いが、大きい効果」を狙う高リスクの「将来への投資型」の施策なのか。逆に「効果の規模は高くはないが、高い確度」で成功するような「積み上げ型」の施策なのかを、事前に明確に設定した上で、目的に見合った企画書にしたい(図5)。

図5 施策規模と成果の「レバレッジ(小さな力で大きな効果を得ること)」を意識する

視点3
「人的リソース」を確保する

誰がどうやって行う広報活動なのか

中小・ベンチャー企業の特徴として、人的リソースの不足が挙げられる。分業体制のある大企業とは違い、一人の担当者が広範囲なコミュニケーション業務を担当するため、協力体制が曖昧になりやすい。企画書を作成する上では「誰が行うのか」というリソースの確保の問題が避けられない(図6)。

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