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有事のレピュテーションマネージメント

コロナ禍で再点検すべき危機管理広報のポイント

エイレックス代表取締役 江良俊郎

新型コロナウイルスの感染拡大で、想定外のリスク対応に苦慮した広報担当者も多いだろう。広報パーソンが再点検すべきパンデミック・リスクと危機管理広報のポイントについて、危機管理広報のコンサルタントが整理した。

Q1 自社から感染者が出た場合の適切な広報対応とは?

不特定多数の接触者が見込まれる場合、注意喚起の意味で公表する。

感染拡大初期は「自社で感染者が出た場合、公表すべきか」「何を公表すればいいか」との相談が当社に多数寄せられた。パンデミック・リスクのように、自社に原因がない危機で、まず考えるべきは自社の「公表方針」だ。コロナ禍を現段階(5月上旬)で振り返ると、公表すべきかどうかは感染リスクに関する社会の関心度、症状の程度で大きく変わった。不特定の濃厚接触者を出した場合やネットの書き込みが始まったような場合は、速やかに公表する企業が多かった。

一方、軽症や無症状の場合は、自社の業態や時流に加え、自社の社員か、アルバイト社員や関連会社の社員か、など感染者の立場に応じて「開示しない」選択肢も取られている。自治体の公表基準もまちまちで、一般的な基準があるわけではない。ただし各企業は「顧客を含むステークホルダーがどう受け取るか」を念頭に方針を決めなくてはならない。また公表しないリスクも考える必要がある。

開示の流れを決めた2事例

企業が自発的に公表する流れを作った案件が2つある。ひとつは2月14日、大手システム会社が公表した「当社拠点における新型コロナウイルス感染者の発生について」のリリースだ。

公表に踏み切ったきっかけはSNSとネット掲示板への書き込み。本人と思われる人物がネット掲示板に「自分は感染した」などと書き込み、勤務先の特定がネットユーザーの一大関心事となる一方、同社が入居するビルで感染者が発生しビルが封鎖されたとTwitterに書き込まれた。2つの情報が関連付けられた結果、「大手システム会社で感染者発生」との噂が独り歩きし騒動になった。極めて初期だったため、この会社に多数の取材が入ったようだ。当該企業は「沈黙は風評被害を拡大させる」として情報開示したと考えられる。

もうひとつは駅員感染のケースだ。感染の確認は2月22日。自治体は会見で感染の事実は発表したが、プライバシーに配慮し企業名、職業は公表しなかった。しかし翌日夜には、感染者の発生を知らせるメールなどの内部情報がネット掲示板に投稿された。2月24日、自治体は再度会見し、社名・駅名を出して駅員であると公表。鉄道会社は個別取材では感染者が駅員と認めていたが、この日正式に公表した。

駅員とはいえ、内勤社員で不特定多数との接触は少ないことから自ら公表しなかった鉄道会社の対応について、一部大手メディアは「駅員感染、2日前把握も公表せず」と批判的な見出しで報じた。

新型コロナウイルスへの感染者情報について、企業は法的には公表する必要はないとされる。しかし事実が明るみになった際、「隠そうとした」と受け取られかねない。「あの店は感染者が出た」と噂が立てばSNSで拡散する恐れもある。そうなったとき、公表していたか否かを問う意見が多いのも事実だ。

Q2 施設を利用した顧客の感染まで企業側が開示する必要はあるのか?

濃厚接触ありなら感染事実を開示。感染者のプライバシーに配慮を。

対応に苦慮するのはスポーツクラブやホテル等自社施設を利用した顧客が感染者だった場合や、商業施設やビル管理会社にとって感染者がテナント従業員であった場合だ。このようなケースも、まず濃厚接触者の特定だ。感染者と接触の可能性のある方々については、個別に保健所に情報提供して濃厚接触者に当たるかどうかの判断をしてもらう必要がある。

今回、濃厚接触者とされた場合は2週間の自宅待機となった。スポーツクラブであれば念のため全会員の顧客に、商業施設であれば他のテナントにも、個別に感染者発生の事実を伝えたほうがよい。

注意したいのは、個別の通知用書面や施設内限定で貼られた張り紙などがメディアやオンライン上に流出する恐れがあることだ。実際に感染者の確認初期には、丸の内の大型ビル内に掲示した文書が写真に撮られ拡散したり、報道に使われたりした。感染が広く拡大し他の企業も同様の対応をしていればニュース性は低く、取り上げられる懸念はあまりないだろう。しかし初期段階で本件のような社会的関心事は、内部向け文書でも外部に出る可能性がある。表現が適切かなど、十分な確認が必要だ。

感染者に誹謗中傷の恐れ

また感染者のプライバシーに十分配慮する必要もある。これは...

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