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IRの学校

株価変動のリスクにIR担当者がとるべき対策

大森慎一(Prop Tech plus 監査役)

広子たちはIR担当として、忙しくも刺激的な日々を送っている。IR業務における危機管理について考えている中で、「株価変動リスク」への備えを検討することに。



大森:前回は全社的なリスクマネジメント、危機管理におけるIR担当者としての考え方をまとめたけど、今回はIR業務の危機管理として、最も優先すべき株価変動リスクを考えてみよう。

広子:株価変動は確かに大きなリスクですが、株価って反動するものですし、コントロールできる類のものではないですよね。

東堂:ある意味で、IRの仕事は、株価の変動を引き起こす可能性のある材料を提供するものだという整理もできますよね。

大森:そうだね。IRの業務から考えると、株価変動が起こらないようにしようといったリスク軽減や回避といった内容ではないよ。株価変動に関して起こりうる危機、悪い出来事ってなんだろう?

広子:そりゃあ、株価下落ですね。

大森:では、その危機が発生した場合の対処方法を考えてみようか。

東堂:えっ、ちょっと待ってください。危機発生と言いますが、株価下落という事象は、程度を考えなければ、頻繁に起こりますし……。

広子:あっ、そうか。基準が必要ですね。前日比何%以上の下落が発生した場合、とか。

大森:いいねえ。でも、その場合どういう対処をするの?

広子:むむ。株価が下がった原因を考えて、そしてそれぞれに対して……。う~ん、難しい。

大森:ハハハ、そうだよね。株価下落という事象をトリガーにすると対応を整理するのが難しい。なので、中心的な業務である情報開示という業務から考えてみよう。

ポリシー設定の手順を整理

大森:まず、情報開示には発生事実と決定事実がある。リスクが発生して事実が確定していない段階で、IR担当ができることは、「適時開示」のルールを守り、真摯な態度で状況説明をして、株主や投資家などからの信頼性を確保するぐらい。しかもこのケースは広報などとも連携して、全社共通の危機発生時対応とし、事前に詰めておいた方がいいと思う。

したがって、IR単独で危機管理として扱うケースとしては「発生事実が確定して何らかの決定事実として公表する場合」とするのがいいと思うよ。ネガティブな情報開示で、株価下落が想定される場合だね。例えば、製品不良が発生し、結果として機会損失による減収、新たな投資や賠償などの経費負担などが重なって業績の下方修正に至り、情報開示を行うといったケースだね。

東堂:なるほど。でも決定事実の公表といった段階では、事前に準備できるので対処しやすいですよね。

大森:その通り。きちんと決められた手順で資料と想定問答を作成し、開示担当者にポリシーの徹底が図れていれば、そう恐れるものではないと思うよ。気持ちの良いものではないけれど。

広子:ポリシーというと、ホームページで記載している開示ポリシーのことですか?

大森:そうだね。その発表の場におけるポリシーのこと。当然開示ポリシーに則って伝えるべき内容、加えてどう伝わってほしいか、どう解釈されたくないかといった方向性や基本姿勢、標準的なトーン&マナー、補足説明に関する権限、既開示の範囲などを整理しておくイメージかな。

東堂:なるほど。ここで事前に準備しておくのは、そういったポリシー設定の手順や徹底のための方法論ということですか。

大森:もちろんその前に起こったことの整理、原因、業績などへの影響、再発防止策などの整理手順も整理してフロー化しておくといいかな。

広子:なるほど、ありがとうございます。株主総会マニュアルをつくるイメージを参考にすれば、いいですね。

大森:いいねえ。

市場や他社の動きも監視

大森:ここまでは、ある程度危機が予測できる場合に、危機の拡大や二次被害を避けるための対応策。次に、考えなければいけないのは……。

広子:えっ、ちょっと待ってください。まだあるんですか?

大森:そりゃあね。これだけだとネガティブ情報への対応だけであって、株価変動リスクの対応までは至ってないから。

東堂:確かに。とすると?

大森:「予期せぬ株価変動への対応」とでもいうのかな …

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