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IRの学校

IRにとってのクリエイティブ戦略とは?

大森慎一(Prop Tech plus 監査役)

広子たちはIR担当として、忙しくも刺激的な日々を送っている。東堂は、広子が夏季休暇を取っている間、広子から与えられた課題に取り組み始めた。全社的なクリエイティブ戦略に対するIR室からの要望をまとめるというものだ。



東堂:こんばんは。

大森:こんばんは。広子さんはお休みなんだね。

東堂:そうなんです。今年は夏季休暇をちゃんと夏に取るって。

大森:昨年は少し遅かったもんね。でも、昨年は休み中も自分の宿題に取り組んでいたけど、今年は相談がなかったなぁ。

東堂:今回は私に夏休みの宿題を出していかれました。休み明けすぐに取りかかれるよう、準備をするようにと。

大森:わはは。さすがは広子さん。で、どんな宿題なんだい?

東堂:実は最近弊社の社長直下の組織として、クリエイティブ戦略室が新設されたんです。

大森:ほうほう。

東堂:全社横断的に、統一感のあるデザインを戦略的に考えていくようで、社長が新しくチャレンジするテーマのひとつだそうですよ。

大森:なるほど。いい方向性だね。

東堂:その方針を受け、各部署それぞれが自部署で情報発信をしている状況を調査し、その目的、ターゲット、伝達の手段、頻度などをまとめています。そこで宿題は、来月の初ミーティングでIR室の状況を発表する際の資料作成と、あとは……。はぁ。

大森:ん?

東堂:その資料は戦略室からのリクエストですが、広子さんからの宿題は、現状調査にとどまらず、IR室の考え方、要望を盛り込んだプロポーザルを作成すること。いっそのこと「クリエイティブ戦略のたたき台をまとめてしまえ」というものです。先んじて発表してしまえば、全社の戦略に大きな影響を与えられるだろうって。

大森:豪快な考え方だね。クリエイティブ戦略までまとめてしまうのは、やりすぎ感はあるけど、やりたいことは分かったよ。

東堂:そうですか。私には、皆目見当もつかず……。何から始めるべきか困っています。

大森:うーん。まずはクリエイティブ戦略室からのリクエストから始めればいいと思うけど。

東堂:そうですよね。そこまではまとめました。過去の実際の資料も集めました。問題はその先なんですよね……。広子さんはデザインにも造詣があるから、イメージできると思いますが。

IRは“何”を伝えたいのか

大森:ちょっと待って。少し誤解してないかな? クリエイティブ戦略って、別にビジュアルの方のデザインはあまり関係ないと思うよ。

東堂:えっ? そうなんですか。

大森:一般に「“何を”“誰に”“どう”伝えるか」の“何”の部分を指すんだと思う。だからその前提として、「情報発信の目的、ターゲット、伝達の手段、頻度」をまとめてほしいんじゃないかな。

東堂:そうなんですか。てっきりビジュアル全般の見直しをするのかと思いました。

大森:“どう”の部分で効率的に伝えるために「どういうメディアを使って、どういうビジュアルで訴えるか」を考えたりするんだろうけど。そこは、プロに任せればいい。逆に言うと「任せるための準備をしっかりしよう」というのが広子さんのリクエストではないかな。

東堂:分かりました。

大森:では「“何”を“どう”伝えているか」を整理し、現状の課題とゴール目標の設定につながる資料づくりをミッションとして、東堂さんがまとめた資料を見ていこうか。

IRの特殊性を意識しよう

大森:うん、いいね。ではまとめた事実をもとに、もう少し掘り下げてみよう。そうだな、IRサイトでやってみようか。「IR情報」を「投資家」に対して「ホームページに記載」して伝える。目的は「投資に資する情報提供のため」か。なるほど。

東堂:どうですか?

大森:そうだな、3点ほどアドバイスできるかな。戦略室がまだ知らないであろうIRの特徴・特殊性を補うためにね。まず1つ目は目的別に分解すること。これによって、ターゲットも細分化され“誰に”の部分が明暗になるだろうね。

東堂:目的ですか?

大森:例えば、IRサイトの目的を細分化して掘り下げてごらん。

東堂:えっと、まず「当社に興味を持ってもらう」「当社を深く知ってもらう」ことなどが目的です。

大森:いいねえ。でもそれは一般的な広報にも言えることだよね。違う部分はないかな。

東堂:すみません。「適時開示を充足する」という根源的な目的を忘れていました …

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