日本唯一の広報・IR・リスクの専門メディア

           

IRの学校

IRでのクリエイティブ戦略の留意点

大森慎一(Prop Tech plus 監査役)

東堂は、広子が夏季休暇を取っている間、広子から与えられた課題に取り組んでいる。全社的なクリエイティブ戦略に対するIR室からの要望をまとめるというものだ。前回に続き大森先生の助言のもと、今回はIRサイトについて考えてみた。



大森:前回はIR室でのクリエイティブ戦略をまとめるにあたり、❶目的別に分解すること、❷なぜその方法や手段を選んでいるか整理すること、という2点をアドバイスしたけど、どうだい?

東堂:整理すべき方向性が見えてきた気がします。

大森:それはよかった。さて、3つ目のアドバイスは「同業他社のIRサイトを参考に」だね。

競合企業を意識する必要性

東堂:えっ!そんなアドバイスが出てくるとは思いませんでした。

大森:意外だよね?

東堂:そうですね。他社にない独創的なものをつくり上げるべきかと思っていました。その下調べのために同業他社のサイトを参考にする、ということですか?自社サイトにない要素を探すというか……。

大森:確かに商品やサービスをアピールする目的のサイトだと、「他の競合先の製商品に対して優れているか」や「他の競合にはないオンリーワンなサービス」だとか、そういうキーワードが目立つね。けどIRサイトでは逆に、他社がどういう情報を開示しているかを参考にすべきだね。

東堂:どうしてですか?

大森:代表的には投資を検討するためだと思うけど、IRサイトの来訪者は、IRサイトを見て具体的に何をしたいのかな?

東堂:投資を検討するために、投資に値するか否かの判断材料を探しに来ていると思いますが。

大森:そうだね。投資家の投資スタイルは千差万別だけど、ひとつのニュースやトピックスといった材料だけで飛びつく人は少ない。もともと注目・研究していた銘柄に材料が出た場合は別として、株主自らのポートフォリオ内の銘柄や同業他社と比較し「割安である」「成長性が高い」「配当利回りが高いなどと判断すれば」投資に至ることが多い。

東堂:なるほど。株式として比較するためにサイトを訪れるから、比較が容易にできる仕掛けも必要だということですね。

大森:その通り。とはいっても、他社の情報を直接、載せるわけにもいかないよね。

東堂:だから同業他社がどんな開示をしているかをよく調べて、有用ならば、同様の情報を開示しようということですね。

大森:そうだね。同業他社を意識する必要性が見えてきたかい?

東堂:はい。そう言えばIPO(新規上場)したばかりの会社のIRを担当している知人が、「当社は、基本的に比較対象の企業がなく、機関投資家に競合を聞かれて困っている。当社の立ち位置の独自性に関するアピールが通じていない」と言っていました。こういう場合、どうすればいいのですか?

大森:企業側に立てば、直接競合する企業はほとんどないのに、競合はどこ、と聞かれても困るよね。

東堂:はい。当社でも、機関投資家が比較対象に挙げる会社を営業担当に見せたところ、首をひねっていましたね。

大森:そうだね。気持ちは分かるけど、競合会社がないなんて言うと、機関投資家から「市場性が低い」と評価されてしまう恐れすらあって、マイナスにしかならない。

東堂:えっ、そうなんですか?

大森:仮に新たな需要に基づく市場だ、と考えたとしても、何らかの理由で既存の代替する市場があるという目線で検討すべきだね。

東堂:例えばどんな感じですか?

大森:例えば、携帯とかスマホなどの移動体通信の市場は、10数年前から急速に拡大していると思うけど、固定電話市場の代替であるほか、消費行動や余暇時間の割り振りで考えると、各種ゲームとか、書籍や新聞、ラジオやテレビの市場の代替かもしれない。そういう消費面、予算面といった広い意味での競合を考えてみるのもいい。

東堂:なるほど。

大森:それと新興企業だと、当該市場や消費行動面での競合より、業種の中で、企業規模や収益の源泉の構造が似ている会社を比較対象にするくらいでいいと思う。

東堂:IR活動においては、投資商品という一面を忘れてはダメということですね。

大森:そう。株式投資に関しては、比較対象となる銘柄がないのは、投資対象になりづらいと割り切って対応した方がいいね。

東堂:知人にも伝えておきます。

開示ステータスには留意

大森:そうだ。その知人の方に確認しておくといいことがある。

東堂:はい、なんでしょう?

大森:コンテンツの内容とは別に、運用フェーズになったら、その情報に関しての「開示ステータス」の管理が必要ということだ。

東堂:フェア・ディスクロージャー(FD)・ルールですね。

大森:そうだね。しかもこれは、全社的に一括管理すべきだ。情報発信する可能性のある部署、経営陣も整理しておくといい。

東堂:そうですね。重要情報に当たるかどうか、意識しなければならないのは、IPOの前後で一番大きな違いですね …

あと63%

この記事は有料会員限定です。購読お申込みで続きをお読みいただけます。

IRの学校 の記事一覧

IRでのクリエイティブ戦略の留意点(この記事です)
IRにとってのクリエイティブ戦略とは?
ファン株主づくり 優待制度をどう活かす?
企業が取り組むSDGs、その捉え方
日本企業のガバナンスは向上したのか?
株主の「属性」に注目したIR効果測定

おすすめの連載

特集・連載一覧をみる
広報会議Topへ戻る

無料で読める「本日の記事」を
メールでお届けします。

メールマガジンに登録する