複雑化する企業の諸問題に、広報はどう立ち向かうべきか。リスクマネジメントを専門とする弁護士・浅見隆行氏が最新のケーススタディを取り上げて解説する。
問題の経緯
2019年6月7日
入江慎也(カラテカ)が宮迫博之(雨上がり決死隊)ら吉本興業の芸人を、事務所を通さずに特殊詐欺グループの忘年会に参加させた「闇営業問題」。この日発売の写真週刊誌がスクープした。7月20日には宮迫と田村亮(ロンドンブーツ1号2号)が記者会見を開き、事務所から会見の開催許可が下りなかったことなどを明かしたため、吉本興業の企業姿勢が問われることとなった。
吉本興業に所属する芸人らによる「闇営業」問題。発覚から2カ月以上が過ぎても、一向に鎮静化する目処が立っていません。それどころか、日々新たな問題が指摘され、事態が収束する気配がありません。
なぜ、吉本興業の危機対応は失敗してしまったのでしょうか。主に危機管理広報の観点から分析します。
初動はクリーンな企業姿勢をアピール
発端は6月7日発売の写真週刊誌『FRIDAY』(講談社)の記事でした。吉本興業は事前に、「カラテカの入江慎也が特殊詐欺グループの忘年会に吉本興業所属の芸人を紹介した」と報じられることを知り、内部調査しました。入江が事実を認めたため同4日付で契約を解除。ここまでの対応は素早かったといえます。
むしろその素早さから、吉本興業が"反社会的勢力との癒着を認めない"との姿勢をアピールすることができていた、とも理解できます。
ただ、『FRIDAY』の記事では、宮迫博之(雨上がり決死隊)ら吉本興業の所属芸人が特殊詐欺グループから1人100万円をもらっていたことまで報じられました。これに対して当初、宮迫や田村亮(ロンドンブーツ1号2号)は金銭をもらっていたことを否定していました。
ところが7月20日には宮迫と田村が本件に関する記者会見を実施。その場で2人は、『FRIDAY』の発売翌日には金銭を受け取っていたことを吉本興業に報告したと明かし、「静観」を求められたため表向きは否定した、と暴露しました …