複雑化する企業の諸問題に、広報はどう立ち向かうべきか。リスクマネジメントを専門とする弁護士・浅見隆行氏が最新のケーススタディを取り上げて解説する。
問題の経緯
2019年6月1日
当社元社員ご家族によるSNSへの書き込みについて
当社元社員ご家族によるSNSへの書き込みに関し、当社の考えを申し上げます。
1. 6月2日に弁護士を含めた調査委員会を立ち上げて調査して参りました。6月3日には社員に向けて、社長からのメッセージを発信致しました。更に、6月5日に、社内監査役及び社外監査役が調査委員会からの報告を受け、事実関係の再調査を行い、当社の対応に問題は無いことを確認致しました。
(中略)
元社員の転勤及び退職に関して、当社の対応は適切であったと考えます。当社は、今後とも、従前と変わらず、会社の要請と社員の事情を考慮して社員のワークライフバランスを実現して参ります。
元カネカ従業員の妻がTwitterでパタハラ(パタニティハラスメント、育児休業などを取得する男性への嫌がらせのこと)を告発し炎上。3日には社長が全社員に「配慮不足であった」などと記した内容のメールを送った。6日にウェブ上で発表された公式見解は法律論に終始しており、メールの内容とも食い違うもので、さらなる批判の的にもなった。
大手総合化学メーカー「カネカ」の元従業員の妻によるSNSへの投稿が、同社のイメージダウンにつながりました。妻は2019年6月1日に「夫が育休から復帰後2日で、関西への転勤辞令が出た。引っ越したばかりで子どもは来月入園。何もかもありえない。不当すぎる」などとTwitterに投稿。
それに対して「立派なハラスメント案件だよ」などと批判が殺到しました。3日には『日経ビジネス』(日経BP社)が本件に関するインタビュー記事をオンラインで掲載し、世の中に詳細が知れ渡りました。同日、カネカの株価は3615円と年初来最安値を記録する事態にも陥ったのです。
今回は、この事例を題材にSNS炎上後の危機管理広報のあり方を検討します …