ブログや掲示板、ソーシャルメディアを起点とする炎上やトラブルへの対応について事例から学びます。
6月末、結婚情報サイト「ゼクシィ」のメルパルクSENDAIのページに「精神的苦痛で立ち直れていない」とするレビューが掲載された。絶対に旧姓を言わない約束が破られた、会場は1日1組と言われたのに当日別のカップルの披露宴があった、ゲストの引き出物の中に原価まで細かく書かれた発注表が入っていた、など数々のトラブルが書かれていた。
このレビューが注目を集めたのは、式に出席したという新婦の友人のTwitterがきっかけだった。絶対にこのホテルを許したくないとし、レビューにない情報も含めて問題点を連投した。そして7月9日、日本テレビ系『スッキリ』でもこの問題が報じられた。この前日にようやくメルパルクSENDAIとメルパルク本社のサイトに謝罪コメントが出ている。
しかしそれはネット上の不信感を払拭するものではなかった。その後さらに過去の利用者やバイト経験者が不満を発信し、ニュースなどを見た人たちが批判コメントを寄せるなど広がりを見せた。ネットニュースによると、ホテル側は、式場の支配人などが新郎新婦のもとに出向き、今回の費用請求をしないこと、また式のやり直しなどを提案したと報じられている。
一向に顔が見えない
最初はよくある匿名クレームの印象だった。レビューもTwitterも匿名だったからだ。友人がツイートで問題の数々を挙げて注目を集め、現実の問題だという認識を広げた。当の新郎新婦がテレビで顔出しをしてその体験を語ったことで信ぴょう性が上がり、強い同情や関心を引き付けた。
一方で、ホテル側は顔が見えない。レビューへの返信には婚礼グループマネージャー名が書かれているが、謝罪コメントはメルパルクという社名のみ、数々の取材記事でもホテル側の顔は見えないままだ。これではメルパルクへの信用が得られないばかりか、逃げているかのような印象さえ与える。
メルパルクは謝罪コメントで「弊社は本件につきまして、誠心誠意対応を進めているところでございます」とした。どうやら個別ケースの対応に留まらない問題だと認識していないようだ。
不信に向き合う努力を
リアルで解決しないからレビューに書かれる。だからといってネットで批判や不信が広がるわけではない。差を生むのは情報の信ぴょう性だ。友人のツイートが拡散したのは具体的でリアリティがあったからである。
レビューにはホテルに対する不信感を生む内容が含まれている。例えば、会場は1日1組のため前日から飾り付けできると契約したのに当日直前まで「会議で披露宴会場を使う」と告げられた。しかし実際には他の披露宴が入っていた、などだ。これは社内の連携不足では説明できない嘘だ。嘘は組織への不信感につながる。ホテルはこの不信感に向き合い早い段階からきちんと説明する必要があった。それが批判をここまで広げた最大の要因である。
社会情報大学院大学 特任教授 ビーンスター 代表取締役社会情報大学院大学特任教授。米コロンビア大学院(国際広報)卒。国連機関、ソニーなどでの広報経験を経て独立、ビーンスターを設立。中小企業から国会までを舞台に幅広くコミュニケーションのプロジェクトに取り組む。著書はシリーズ60万部のベストセラー『頭のいい説明「すぐできる」コツ』(三笠書房)など多数。個人の公式サイトはhttp://tsuruno.net |