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コーポレートブランディングカンファレンス2019

成長企業の大幅な社内変革 社名変更を機にブランド価値創造

LIFULL×パーソルホールディングス

2017年、それぞれ社名を変更したLIFULLとパーソルホールディングス。社内改革とともにコーポレートブランディングに注力している2社がその背景や具体的な社内外への情報発信の取り組みについて語った。

パーソルでは広告やテレビCMなども、ブランド認知と助成認知獲得を目的として制作。社外に対する発信も積極的に行っている。

ブランド価値は企業戦略の中心

──2社とも近年、社名を変更しました。社名変更とコーポレートブランディングに注力することになったきっかけを教えてください。

川嵜:私たちLIFULLは、「あらゆるLIFEを、FULLに。」というコーポレートメッセージを掲げ、世界中のすべての人の暮らしや人生を、安心や喜びで満たすライフソリューションをつくっていこうと事業運営をしています。「LIFULL HOME'S」という日本最大級の不動産・住宅情報サイトがよく知られていますが、それ以外にも介護やインテリアなど、あらゆるライフソリューションを提供しています。

そんな私たちが2017年4月に「ネクスト」から「LIFULL」に社名を変更したのは、企業の根幹となるマスターブランド戦略を推進していく必要があると感じたからです。しかし消費者から「どんな事業を展開している企業なのか分からない」という声が寄せられるなど、課題も出てきました。

そこで、「あらゆるLIFEを、FULLに。」というコーポレートメッセージを一方的に伝えて社名認知を高めるだけではなく、消費者にとってどのような価値があるか、専門用語で言えば"ブランドパーパス(ブランドの存在目的)"を明確にする必要性も感じました。

大橋:パーソルは「はたらいて、笑おう。」をコーポレートスローガンに、人と組織に関する社会課題を解決していく企業グループになります。人材派遣のテンプスタッフとして1973年に設立され、認知度の高かった傘下企業の「テンプスタッフ」「インテリジェンス」という社名を2017年7月に変更しました。一番の理由は単一事業を超え、グループ一体となって新たな価値を顧客や社会に提供していくためでした。

我々は国内外でのM&Aを通じて拡大し、順調に成長してきました。しかし、今後は日本国内で労働力不足が確実に起こり、産業構造の変化やダイバーシティへの対応も迫られていきます。外部環境の変化が著しい中、「このまま縦割りの組織で派遣事業と人材紹介事業ごとにソリューションを提供していても、クライアントの経営課題を解決できない」という問題が出てきたため、私たちも提供価値をアップデートしていこうと考えました。

そのために議論を続け、2014年末にグループ経営に舵を切り、PERSOLという統一ブランドの導入も決断しました。

川嵜:ブランド価値は、私たちも非常に重要視しています。例えば、日本に多くみられるのが、サービスの仕組みや技術力の差で競合他社と差別化しようとする企業です。ただ、当社代表取締役社長の井上高志の言葉を借りれば、「サービスの仕組みやテクノロジーでは差がつかない、競合と同質化してしまう」という状況もあります。

アメリカのAppleやGoogle、Amazonなどでは、一貫したブランド戦略をベースにイノベーションなどを重ねていく活動があります。私たちもそれらのグローバルカンパニーのように、ブランド価値を積み上げていくことで競合他社との差別化を図ろうと、一貫したブランド戦略に取り組んでいます。

まず取り組んだのは、「あらゆるLIFEを、FULLに。」というコーポレートメッセージから、消費者が我々の価値をどのように見てくれるかという、ブランドパーパスを改めて定義することでした。

そして、そこから導き出されたのが、「まだ手つかずの問題でも、視点を変える発想で豊かさに変わっていくはず。そしてあらゆる人が、当たり前に無限の可能性の中から自分の生きたいLIFEを実現できる社会へ」という定義でした。このブランドパーパスをすべての戦略の真ん中に置いて、実行していこうとしています。数多く抱えるサブブランドも、このブランドパーパスを起点にサービスやメッセージの発信の仕方を再設計しています。

大橋:私たちも、社名変更の決め手は経営の意思とともに、グループ名とサービス名の認知にズレがあるという調査結果でした。これらを踏まえ、2016年に策定した初めてのグループ中期経営計画で、ブランディングの目的を明文化しました。❶顧客の期待/グループビジョンの実現 ❷既存事業の成長 ❸グループ一体化 ❹海外進出 ❺投資効率の向上、という5つを目的として投資をすることで、ブランディングを推進しています。

広告やサービスにも反映

大橋:「パーソル」とグループ名を統一した当初でいえば、Appleの創業者であるスティーブ・ウォズニアックさんや88歳の現役モデルであるカルメン・デロリフィチェさんを起用した広告などのキャンペーンを行うことで、「はたらいて、笑おう。」というスローガンとパーソルの名称認知を目指しました。さらに今春からは、タレントの内村光良さんを起用して、より業態理解を促進するプロモーションを展開しています。

また、プロ野球のパシフィック・リーグのオフィシャルスポンサーも2年目を迎え、スポーツを通したPRや認知獲得を行ったり、「はたらいて、笑おう。」を体現している方を表彰する「PERSOL Work-Style AWARD」というPRイベントを実施したりしています。

川嵜:我々のブランドパーパスを起点にしたサービスの具体例としては、「LIFULL HOME'S」でスタートしている「したい暮らしに、出会おう。」というキャンペーンがあります。これは物件の条件などに依存していた今までの住まい探しではなく、自分の本当に望む暮らし方や既存の価値観にとらわれないライフスタイルから物件を探すことができ、再定義したブランドパーパスをベースにしています。

また、「LIFULL Table」という飲食事業も行っており、「持続可能な社会を叶える、未来の一皿を。」とのコンセプトで、「地球料理 -Earth Cuisine-」という、食べることが地球のためになるプロジェクトもスタートさせています。第一弾では「Eatree Cake」という間伐材を味わうパウンドケーキを販売するなど、これらも、「手つかずの問題でも視点を変える発想で豊かさに変わっていくはず」とするブランドパーパスを起点とした新しい取り組みとなっています。

LIFULLによる社会課題解決へのアプローチの一環で誕生した、間伐材を使用したパウンドケーキ。

全社員がブランドの体現者に

大橋:私たちとしては、認知度が着実に上昇している一方で、課題にも直面しています。そもそも社名変更をした理由は、派遣や人材紹介といった単一事業を超えて、グループ一体となって顧客・社会に新たな価値を提供していくためでしたが、自分たちの期待する効果は事業部門とコミュニケーション部門で違いがあったりします。

事業部門からすると、名称を変えることで売上やサービス利用者の増加といった短期的な効果への期待があります。一方で、コミュニケーション部門からすると、名称変更の効果を事業貢献度や社会貢献度でも可視化して、中長期でその指標を設定して追いかけたいという考えがあります。全社・全部門で当事者意識を持つためにも、これらの考えの違いをすり合わせながら、グループ全体でコーポレートコミュニケーションを推進するためのチャレンジを、日々行っているところです。

川嵜:私たちは対社内では、「利他主義(altruism)」という社是をはじめ、「常に革進することで、より多くの人々が心からの"安心"と"喜び"を得られる社会の仕組みを創る」という経営理念やガイドライン、スローガンといったものまで、しっかり浸透していると言えそうです。

ただそんな中でも、今まではコーポレートメッセージとスローガンを打ち出すこと以外には取り組めていない状況がありました。そのため、対社内に経営理念とブランドパーパスはしっかりとつながっていると、メンバーに理解してもらうという活動をスタートさせています。

現在は経営理念とブランドパーパスの関係を説明する際、経営理念は「何を目指してどう会社をつくっていくか」という経営陣の変わらない考え方。ブランドパーパスは「その経営理念を実現するために消費者や社会をどう動かしていくか」という活動指針だと話しています。対社内のインターナルブランディングも含めたあらゆるブランド活動は、最終的に我々の目指しているビジョンや経営理念を達成するための活動だと思っています。

全社員がLIFULLのブランド体現者になることが、我々の目指している世界観を築くことにつながるはずなので、まずはしっかりブランドを理解し、それを実践する状況をどう構築していくか。それがインターナルブランディングの目的だと考えています。

ブランドで事業・社会に貢献

──最後に、今後に向けたコーポレートブランディングの方針を聞かせてください。

川嵜:コーポレートブランディングはどうしても、PR活動やプロモーションそのものと思われがちです。今でも社内にはそういった既成概念があると言えるので、まずはその意識を変えていくことを目指したいですね。あとは、ブランドパーパスを起点に新規事業を開発するなど、これからも一貫したブランド戦略を築き上げていきたいと考えています。

大橋:私たちは現在、コーポレートコミュニケーションの中期経営計画を立てようとしています。ブランドが事業や社会にどのように貢献しているのかという、定性・定量の両面における可視化された状態目標とKPIの設定を行い、中期的なゴール設定を目指しています。

また、グローバル企業として社内外のあらゆるステークホルダーに対して、持続的な企業価値の向上を目指し、コーポレートコミュニケーションの新たな施策にも挑戦していきたいと考えています。

図1 LIFULLの一貫したブランド戦略
ブランド戦略は、「対外コミュニケーションでイメージを構築するもの」ではなく、「事業を含むすべての活動」で、具現化するものであり、ブランド価値の高い企業ではすべての企業活動を見直す羅針盤として位置づけている。

出所/LIFULL

パーソルホールディングス
グループ経営戦略本部 経営企画部 広報室 室長
大橋直子(おおはし・なおこ)氏

2007年パーソルキャリア(旧インテリジェンス)入社。2015年にパーソルホールディングス(旧テンプホールディングス)経営戦略本部ブランドコミュニケーション部に広報として異動。部内でブランド推進室を立ち上げ、グループブランディングを担当。2018年7月から現職。

LIFULL
執行役員/Chief Creative Officer
川嵜鋼平(かわさき・こうへい)氏

2017年5月LIFULL入社。ブランド、プロダクト、コミュニケーション、研究開発など全社のあらゆる領域のクリエイティブを統括。それ以前は企業のクリエイティブディレクションを数多く手がけ、国内外の160以上のデザイン・広告賞を受賞している。

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