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ウェブリスク24時

笠松競馬場がTwitterで内定者に公開説教

鶴野充茂(ビーンスター 代表取締役)

ブログや掲示板、ソーシャルメディアを起点とする炎上やトラブルへの対応について事例から学びます。

イラスト/たむらかずみ

Twitterで内定者に公開説教
笠松競馬場に入社予定の内定者によるツイートを不適切と見た就職先の研修担当者が、会社の公式アカウントから注意を促したところ、「公開説教だ」などと注目を集めた。

3月、笠松競馬場(岐阜・羽島)に就職予定と見られる人物がTwitterの匿名アカウントで「運良く引っ掛かりました」「半年は仮採用なので下手なことは出来ないんですが、本採用になったらはっちゃけたいと思ってます」などと投稿した。

笠松競馬場は公式アカウントから、研修担当と名乗った上で「私の研修で何を聞いていましたか?」「当方は、あなたを『引っ掛けた』つもりはありません」「半年後に『はっちゃけ』の予告をされると、当方には警戒しかありません」「4月1日に面接を行いますので回答を準備しておいてください(ツイートを削除しないこと)」などとツイートした。

こうした投稿に対して「公開パワハラ」「研修担当が一番リスクを理解してない」といった批判と、「全面的に正しい」「何も間違っていません」など擁護の声が飛び交う形になった。笠松競馬場の運営組合は「何らかの対応を検討する」などとコメントを出した。

「見える場」で指摘する意味

批判は多数あったが、総合的に判断してTwitter上のオープンな場で注意を促したことについては、合理性があったというのが私の考えである。

問題のツイートを発見した際に、組織としてその対応を決めるには、まず匿名アカウントの本人特定の可否が問題になる。特定できるなら速やかに直接注意すればいい。報道によると今回は特定できなかったという。すると対応は、Twitter上か新入社員全員に向けての連絡という形になるだろう。

ここでのポイントは、今回のような匿名ツイートのリスクの大きさをどう捉えるかだ。組織の信頼性が揺らぎかねない情報漏えいや倫理観の欠如が懸念される場合、アカウントをそのまま放置していること自体が問題視される。全員宛で注意したとしても、最後まで本人特定できない可能性が残る。加えて笠松競馬場のアカウントは日ごろから双方向のツイートをしているアカウントだったことを考えると、「見える場」での指摘には合理性がある。

時代性を踏まえた対応を

問題はその伝え方だ。笠松競馬場は、会話をしていたツイートに加わる形で、関係のない人たちも巻き込んで注意をぶつけた。その表現と連投の様子から、感情的になっていることがうかがえる。そのため、怒りの炎を上げたのはそこで巻き込まれた人たちだった。

どうすれば良かったのか。Togetterなどに「まとめ」られることも考慮し、Twitter上では匿名アカウントに直接問題を指摘した上で、その後はダイレクトメッセージなどでのやりとりに留めるのが、今回のような状況では時代性も踏まえた現実的な解だろう。

もっとも、こうしたSNSの利用が不適切で厳重注意の対象になることを研修でしっかりカバーできていなかったことを問うべきではないだろうか。「私の研修で何を聞いていましたか?」という問いは、「私は言った」という自己正当化でしかない。研修の目的は、理解の浸透を図ることである。

社会情報大学院大学 特任教授 ビーンスター 代表取締役
鶴野充茂(つるの・みつしげ)

社会情報大学院大学特任教授。米コロンビア大学院(国際広報)卒。国連機関、ソニーなどでの広報経験を経て独立、ビーンスターを設立。中小企業から国会までを舞台に幅広くコミュニケーションのプロジェクトに取り組む。著書はシリーズ60万部のベストセラー『頭のいい説明「すぐできる」コツ』(三笠書房)など多数。個人の公式サイトはhttp://tsuruno.net

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