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炎上したレビューから見えてくるニーズ

鶴野充茂(ビーンスター 代表取締役)

ブログや掲示板、ソーシャルメディアを起点とする炎上やトラブルへの対応について事例から学びます。

イラスト/たむらかずみ

炎上したレビューから見えてくるもの
大手米メディアが公開したスマホのレビュー動画が炎上した。折り畳み型の新型スマホにソーセージを挟んだりするものだった。しかし、問題はそれだけに留まらなかった。

米ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)が4月、サムスンの新型スマホ「Galaxy Fold」のレビュー動画を公開したところ、ネット炎上した。動画の中で折り畳みができる特徴的な形をホットドックに見立て、ソーセージをはさんで食べようとするなど、製品の機能紹介ではない部分が問題視されたためで、「WSJとは思えない」「最悪のレビューだ」「スマホはソーセージを挟むためのものではない」などと批判的なコメントがあふれた。

今や経験者のレビュー(紹介記事・体験記)は、製品の購入検討になくてはならないものになっている。高額商品なら尚のことだ。企業もその影響力を踏まえ、メディアやインフルエンサーに商品を貸し出すなどして、積極的に体験をしてもらうことも珍しくない。

そこで多くの企業が気にするのは、その内容がポジティブかネガティブかということである。メーカーとしては当然ながら、商品を好意的・効果的に紹介してもらいたい。ところが話はそれほど単純ではない。メディアやインフルエンサーはそれぞれの観点から読者・視聴者やフォロワーに向けて体験を伝えるからだ。

否定的な情報は他にもあった

もっとも今回のような大手メディアの制作したレビュー動画の炎上は、それ自体が珍しい。発売直前に貸し出していたサムスンとしては、レビュー内容はもちろん、WSJに向けられた批判や今後の関係性などを踏まえ、苦慮しながらも何らかの広報コメントなどで対応したかもしれない。もしもネガティブなレビューがこれだけだったなら。

そう、ネガティブなレビューを発したのはWSJだけではなかったのだ。日本円で20万円もの価格の最新スマホは、スペックだけ見れば魅力的な製品だった。ところが「貸し出し機が壊れた」「画面がチカチカ点滅する」「耐久性に不安」など否定的な情報が次々に出てきた。そしてサムスンは、発売の延期を決めた。

炎上で明らかになるニーズ

炎上はしたが、WSJのレビュー動画は「何がどうひどいのか」を実は分かりやすく伝えている。まずメーカーの宣伝文句からユーザーは大きな期待を寄せるであろうこと。ところがネットにはすでに不具合の報告が数多く見られること。

また多くの人が使用時に習慣的に外してしまうであろう画面保護シートは、外すことで数々の問題が生じるにもかかわらず、そのための加工と注意喚起が不十分なことなどだ。動画では期待して手に入れた人たちが抱くであろう疑問や不信感が具体的かつ率直に述べられている。どんな風に使われ、どんな感情が明らかになるかで、開発時には想定しえなかったニーズや期待も投影されることになるのだ。

この、「スペック」では表せない情報が役立つからこそレビューは参考にされ、購入や場合によっては炎上という反応をも喚起する力がある。レビューをポジティブかネガティブかだけでしか見ないのはもったいない。

社会情報大学院大学 特任教授 ビーンスター 代表取締役
鶴野充茂(つるの・みつしげ)

社会情報大学院大学特任教授。米コロンビア大学院(国際広報)卒。国連機関、ソニーなどでの広報経験を経て独立、ビーンスターを設立。中小企業から国会までを舞台に幅広くコミュニケーションのプロジェクトに取り組む。著書はシリーズ60万部のベストセラー『頭のいい説明「すぐできる」コツ』(三笠書房)など多数。個人の公式サイトはhttp://tsuruno.net

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