長年にわたり社内コミュニケーションの支援を行ってきた産業編集センター。300社を超える企業のインターナルコミュニケーション事例をもとに、社内から生み出すブランド価値醸成の流れを解説した。
インターナルコミュニケーション専門の制作会社として、40年にわたり企業を支援してきた産業編集センター。本講演ではクライアントからよく出る課題の解決策を社内ブランディング施策の事例をもとに解説した。
ムーブメントに社員を巻き込む
インターナルコミュニケーションの施策立案・運用をサポートしている産業編集センターの石原良平氏。そんな石原氏に、実際によく現場担当者から寄せられる課題がある。
まず「理念や会社の提供する価値を社員に浸透させるには、トップから現場までの距離感が遠い」との声だ。石原氏は「"経営トップ→役員→現場指揮官→現場"というようにカスケードダウン(滝が急降下する様子)で情報を流す体制が理想的です」という(図1)。そのために重要なのはトップから順に自社のブランドについて考える場を設けること。ワークショップなどを通して「自分ごと化」(当事者意識の醸成)を進め、自分の言葉で管轄する現場にも啓蒙してもらうのだ。
また、この「自分ごと化」を課題に挙げる担当者も多い。講演では2017年に90周年を迎えた大島椿の周年プロジェクトを紹介。社員が出演したロードムービーの制作をはじめ、社員一人ひとりが周年プロジェクトの企画・運営にかかわることで当事者意識を芽生えさせた。プロジェクトの中でブランドに立ち返る機会を設け、その価値を体感することがポイントだと語った。
企業理念やブランドメッセージによって描く「ありたい姿」と、現場社員の日々の仕事との間にギャップができている例も多い。石原氏はその橋渡しとして社内の優良事例を水平展開で社内に共有することが重要であると語った。評価される仕事とは何かを全社で共有することで、企業理念に沿った自分の仕事のミッションを見つけやすくする。例えば全社投票による表彰プログラムなど社内でムーブメントをつくり、そこに社員を巻き込んでいくことで変革期にある会社への認識も高めることができるという。
ブランド価値の体現者は社員
顧客に対してブランド価値を提示しPRすると、顧客の期待感は高まる。ところがその期待と実際のブランド体験に差が生まれてしまえば、むしろブランドの毀損になりかねない。「ブランド価値を顧客に提供するのは現場の社員です。だからこそ、社内外のコミュニケーションをバランスよく行う必要があります」と石原氏は指摘する。
「インターナルブランディングの対象は社員。外への発信とは異なりターゲットが明確です。❶いつ ❷どこで ❸だれから ❹どのようなストーリーで ❺どう伝えるか、という5つの視点を意識し、従業員に合わせたコミュニケーション戦略を立てることがカギとなります」と締めくくった。

産業編集センター
はたらくよろこび研究所
石原良平氏

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