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広報のためのSDGs入門2

SDGsは世界の「共通言語」 広報活動にはどう取り入れる?

SDGsは広報にとっても重要な「共通言語」だが、具体的な広報活動に落とし込めている企業は少ない。そこで、「発信型三方良し」を提唱する社会情報大学院大学 客員教授の笹谷秀光氏をファシリテーターに迎え、横河電機・セイコーエプソン・ネスレ日本の3社と、社内外への情報発信について考えた。

(左から)
社会情報大学院大学 客員教授 笹谷秀光氏
横河電機 経営管理本部 経営管理センター サステナビリティ推進部長 古川千佳氏
セイコーエプソン CSR推進室 部長 三原 彰氏
ネスレ日本 執行役員 コーポレートアフェアーズ統括部長 嘉納未來氏

【社外広報】

役員全員で積極的に発信

笹谷:3社とも日本を代表する企業であり、グローバルで事業を展開しています。それぞれ世界的視野を持った発信が求められていると思いますが、SDGsに関する社外広報の姿勢や取り組みを教えてください。

三原:セイコーエプソンでは、SDGs推進体制が整ってきた2018年ごろから、SDGsに関する情報を積極的に対外発信するようになりました。これには企業ブランディングや透明性を担保する目的があります。社長の碓井稔だけでなく他の役員たちも、メディアの取材を受けたり、イベントで登壇したりと自ら発信をしています。

その内容も経営戦略に限らず、例えばほとんど水を使わない乾式オフィス製紙機「PaperLab」の開発担当役員が開発プロセスの背景を話す、などといった機会もあります。

統合レポートにSDGsアイコンを入れたのも同年からです。レポートには、CSR重要テーマとSDGsとの関連性を検証したマトリックス表も掲載していて、表を見れば当社の取り組みがSDGsの13項目に関わっていることが分かるようにしました(2018年9月時点の分析結果)。

笹谷:マトリックス表は大変分かりやすく整理されていますね。SDGsの169のターゲットにまで照らし合わせて番号を明記している点において、非常に先駆的なレポートといえます。

企業におけるSDGs達成に向けた取り組みは、17個すべてのゴールと自社の事業とを紐づけて考える場合と、自社が重点を置くSDGs目標や製品を決め、それを起点にする場合があります。セイコーエプソンではその両方に取り組んでおり、お話にあった「PaperLab」は製品を起点にしている事例ですね。

セイコーエプソンでは、役員による発信を強化している。「PaperLab」開発担当役員の市川和弘氏(技術開発本部 副本部長)は、「エコプロ2018」(2018年12月)や「サステナブル・ブランド国際会議2019」(2019年3月7日)に登壇した。

広告やリリースにも活用

古川:横河電機でも、セイコーエプソンさんと同じように統合報告書などのツールで情報発信をしています。2050年に向けたサステナビリティ目標「Three goals」をSDGsと紐づけて図で示し、サステナビリティの注力分野が一目で分かるように工夫しています。

SDGsは、事業活動の中核に組み込まれており、社員は、お客さまとともに目指すゴールと捉えています。ですからSDGsは"お客さまとの会話の最初の入り口"にもなるんです。つまり、営業面での効果や活用も期待されています。

また、企業広告や新製品のプレスリリースにサステナビリティやSDGsの要素を盛り込むこともあります。そのひとつが、2019年3月に実施したリクルーティング目的の広告キャンペーン「地球の物語の、続きを話そう。」です。

笹谷:「Three goals」は2050年に向けた目標なので、2030年までの国際目標であるSDGsのさらなる先を目指している点で、"Beyond SDGs"と言えそうですね。さらに、独自のマトリクス(フレーム)で事業と目標の関係を整理している点にも注目です。「SDG Compass」を自分たちのものとして徹底的に使い倒している先進事例でしょう。

また、SDGsを営業ツールとして使うというアイデアは、特にBtoB企業では今後重要になっていくでしょうね。

SDGsという言葉は使わない

嘉納:ネスレ日本の広報部門の役割は、まずはグローバル共通で持っている企業理念や経営戦略を社内に浸透させること。そのうえで、消費者をはじめ行政やNGO・NPOといった外部のステークホルダーに対しても、それらを分かりやすく伝えて共感を得ることです。

ただ、実のところ、私たちは社外広報においてSDGsという言葉を積極的には使っていません。その代わりに、企業の存在意義にあたる「パーパス」と、事業活動の原則である「共通価値の創造(CSV)」でコミュニケーションを組み立てています(図1)

図1 ネスレ グローバルアジェンダへの貢献

メディアはSDGsへの関心が高いですし、SDGsという言葉を使って取材やイベントへの登壇依頼をいただくこともたくさんあります。そういった機会には積極的に参加させていただき、ネスレの「CSV」の考えをしっかりお伝えすることを意識しています。しだいに、ネスレの考え方が世間にも受け入れられるようになってきたなという感触が得られるようになってきました。

最近では、"事業を通じた社会貢献"に力を入れている企業やオピニオンリーダーとの対話も重要視しています。SDGsの広がりとともに、様々なステークホルダーからグローバルのネスレの動きに関心を持っていただけることが多くなってきましたが、そこからネスレ日本との対話や協働にもつながっています。

笹谷:ネスレはCSVの元祖とも言える存在です。CSVとは、社会課題を自らのビジネスを通じて解決することですね。「SDG Compass」に「価値創造」という言葉が何度も出てくることからも分かるように、企業におけるSDGs達成に向けた取り組みはCSVに直結するものばかりなのです。

つまり、ネスレがこれまでCSVの考えのもとに展開してきた事業は、そのままSDGsと関連づけることができるということです。CSVとSDGsという言葉を使うかどうかの問題に過ぎないわけですね。

【社内広報】

顧客の課題解決で自分ごと化

笹谷:次に、社内に向けた広報活動について伺います。各社、社員からの理解はどのように得ているのでしょうか。

嘉納:ネスレ日本の取り組みとして、2011年から毎年行っている「イノベーションアワード」があります。

アワード設立の背景には、当社が抱える課題がありました。少子高齢化に伴って食品や飲料の需要が減少するなか「現地法人である当社は、日本市場で今後どのように成長していけば良いのか」という課題です。そこで、社長の高岡浩三が行き着いたのがマーケティングとイノベーションでした。

高岡は、従業員一人ひとりがマーケティングとイノベーションを実践する仕組みをつくるために、このアワードを考案しました。アワードでは、まず従業員が「自分は誰のために働いているのか」と考えて自分にとっての"顧客"を設定します。次に、顧客の抱える問題を探し、その問題を解決するためのアイデアを考えます。それを実行し、その結果を発表するのです …

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