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本田哲也のGlobal Topics

サステナビリティとビジネス成長の相関性

本田哲也

今月の本誌特集は「災害リスク」。早いもので東日本大震災からちょうど8年が経つ。「3.11」は、日本における社会的な意識の高まりにもつながった。そして今、世界的な社会課題解決の指針と言えば、国連が旗を振る「世界を変えるための17の目標」、通称「SDGs」。広報とは切っても切れない関係だ。昨年の広報会議7月号でも特集されたように、国連自体がSDGsの広報に力を入れている。SDGs経営を標榜する企業にとっても、もちろん広報は重要な活動になる。

今回はもう一歩進めて、SDGsがマーケティングやビジネスにどう相関するかという話をしよう。なぜなら、SDGs機運の高まりこそ、ビジネスに直結しない「コストセンター」と見られてきた広報部やPRパーソンにとって大きなチャンスだからだ。

この1年ほど、日本でもSDGsの認知度はジワジワあがっている。講談社のライフスタイル誌『FRaU(フラウ)』は2019年1月号で、一冊丸ごとSDGsを特集した(ちょっと前なら考えられないことだ)。しかしまだまだ、日本企業の取り組みはこれからの様相。

一方、海外ではいち早くSDGsに関連させたPRキャンペーンやマーケティング活動が「花盛り」になっている。2017年のカンヌライオンズを席巻した、「Fearless Girl(恐れを知らない少女)」は、仕掛け人の投資会社の認知度を著しく向上させ、同社の投資商品の売上を400%も上げた。これはSDGsの5番目の目標「ジェンダー平等を実現しよう」に対応している。

昨年ヨーロッパで話題になった、ドイツのスーパーマーケット「EDEKA」のキャンペーンもそうだ。ある日、スーパーの店内から海外製品をすべて排除した。人種差別への抵抗を示し、多様性を受け入れることの大切さを示す目的で行われ、ドイツ選挙を前にした排他主義の政党に対するメッセージとなった。棚からほとんどの商品がなくなった様子はSNSから海外にも波及し、世界中で1万記事以上のパブリシティを獲得した。これはSDGsの10番目の目標「人や国の不平等をなくそう」に合致する。

「世のため人のためは結構だが、それで売上は上がるの?」──こういった取り組みを紹介すると、売上に責任を持つ皆さんから必ず出る問いかけだ。しかし、世界ではこの相関も証明されつつある。「社会と関わるサステナブルなブランドを持つことでビジネスは成長する。保有する26のブランドの70%が成長し、我々は46%も早く成長できたのだ」。世界的企業であるユニリーバのCMO、キース・ウィード氏は明言している。ビジネスと社会課題の解決が交わる接点にこそ、広報担当者やPRパーソンが活躍する未来がある。ではまた来月!

SDGsの17の目標。広報パーソンはこの社会課題解決の目標とビジネスを上手く掛け合わせたPRキャンペーンをしていきたい。

本田哲也(ほんだ・てつや)

ブルーカレント・ジャパン代表取締役社長/戦略PRプランナー。「世界でもっとも影響力のあるPRプロフェッショナル300人」にPRWeek誌によって選出された日本を代表するPR専門家。著作、国内外での講演実績多数。カンヌライオンズ2017PR部門審査員。最新刊に『戦略PR 世の中を動かす新しい6つの法則』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)。

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