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本田哲也のGlobal Topics

変化を続けるPR業界 2019年のキーワードは「原点回帰」?

本田哲也

あっという間に2月。ただでさえ慌ただしい広報PR業界の読者の皆さんには、なおのことだろう。とはいえ2019年はまだ始まったばかり。今回は、グローバルPR業界の動向について、いくつか思うところを挙げてみよう。

ひとつめのキーワードは「統合(インテグレーション)」。世界のコミュニケーション業界では2018年、大きな合併が相次いだ。最も注目を集めたのは、急成長したデジタルエージェンシーと歴史ある名門広告エージェンシーの統合。VMLとヤング・アンド・ルビカムによる「VMLY&R」、ワンダーマンとJ・ウォルター・トンプソンによる「Wunderman Thompson」が発表された。

そして、PR業界においても、名門企業バーソン・マーステラと近年急成長したコーン&ウルフが合併し、世界3位となる「バーソン・コーン&ウルフ」が誕生した。これらの統合は世界最大の広告グループWPPの傘下で起きたが、ライバルとなるオムニコムグループも、「オムニコムPRグループ」の名の下に、傘下PRエージェンシーのオペレーション統合を英国やシンガポールで着手している。

この背景には、これまで各エージェンシーブランドに紐付いていた「広告」「PR」「デジタル」などの垣根が希薄化したことがある。この流れは今年も続き、それによる再編や人材流動がグローバルで活性化するだろう。

もうひとつのキーワードは「原点回帰」だ。ここ数年、世界のPR会社が競って強化してきたのが、「ペイド領域」「デジタル領域」「クリエイティブ領域」。時代が統合コミュニケーションの時代に突入し、いわゆる「PESO:Paid(広告)・Earned(パブリシティなど)・Shared(SNSなど)・Owned(自社メディア)」が叫ばれるようになると、PR会社はそれまで門外だった領域強化のために、広告会社やデジタルエージェンシーの出身者をこぞって採用した。

こうした動きはPR会社の進化の一助とはなったものの、一方では「強みの喪失」にもつながった。結局のところ、企業がPR担当者やPR会社に期待したいのは、「Earned」であり、広告ではない。

「ここしばらく、グローバル大手のPR会社では、どれだけクリエイティブ機能を有しているか、どれだけ広告業界から人材を雇ったのかアピールすることが流行したわけです」。世界的なPR業界誌『PRWeek』のスティーブ・バレット編集長は最近の記事でこう述べている。「PR会社にとって今重要なのは、ほかでもなく『PR会社らしく』振る舞うことなのです」とのこと。領域拡大それ自体は悪いことではないが、コア・コンピタンスを失くしては本末転倒。PR会社やPRパーソンは、それを肝に銘じるべきだろう。

個人的には、2019年は「PR発想」で全体戦略を組み立てることとPR活動を「実行する」ことはまったく別物であるという理解を促進したい。PESOが大事になればなるほど、「最初からPR発想で考える」ことが成否を分ける。このあたりは次の機会に掘り下げるとして、新元号が始まる今年もがんばりましょう。ではまた来月!

PESOモデル(by Gini Dietrich)
参考/http://spinsucks.com/communication/pr-pros-must-embrace-the-peso-model/

本田哲也(ほんだ・てつや)

ブルーカレント・ジャパン代表取締役社長/戦略PRプランナー。「世界でもっとも影響力のあるPRプロフェッショナル300人」にPRWeek誌によって選出された日本を代表するPR専門家。著作、国内外での講演実績多数。カンヌライオンズ2017PR部門審査員。最新刊に『戦略PR 世の中を動かす新しい6つの法則』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)。

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