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ポジティブ転換に成功したイギリスKFCのお詫び広告とは?

本田哲也

KFCの文字を入れ替え「FCK」という煽り言葉にしたお詫び広告はSNS上で話題になり、カンヌライオンズ2018のPR部門でゴールドを受賞した。

日大アメフット部、スルガ銀行、日本ボクシング連盟──2018年も多くの不祥事が勃発し、それにまつわる謝罪会見が世の中を騒がせた。本格的なSNS時代には、いわゆるマスコミ対応策としてのメディアトレーニングやQ&Aの準備だけでは不十分な場合もあるように思える。かつて「王道」だった対応をしたがために炎上し、それをマスコミ報道がさらに助長するという事象が当たり前になってきた。2018年最後のコラムは、今月号の特集でもある「危機管理広報」についてお届けしよう。

海外の先進事例を見ていて感じるのは、もはや「危機管理クリエイティブ」とでも呼べそうな事例が年々目立ってきていることだ。その中でもピカイチだったのが、イギリスのケンタッキーフライドチキン(KFC)のケースだろう。2018年にカンヌライオンズでも入賞し話題になったので、ご存じの方も多いかもしれない。

配送業者とのトラブルでチキンがお店に届かないために、イギリス国内900店舗中700店舗が臨時休業に追い込まれた。「KFCからチキンが消える」という、洒落にもならない事態だ。消費者の怒りや落胆は激しく、ネガティブな報道や投稿が広がり始めた。ここでKFCはいわゆる「お詫び広告」を即座に出した。謝罪から始まり、必死に取り組む従業員やフランチャイズオーナーへの感謝と続く、とても真摯だが当たり前のものだ。

しかし、やがて人々は気づくことになる。広告に掲載された見慣れたKFCのロゴが、よく見ると「FCK」という煽り言葉に入れ替わっていることに。「文字を入れ替えただけ?」と思ってしまうが、これが案外深い。謝罪広告は1日でも早く出稿すべきなので、スピードが求められる。文字の入れ替えはすぐできるが、シンプルに、そしてまた絶妙に、ブランドとしての「本音」を表しているところがポイントだ。

配送トラブルという背景から、お客さんだけでなく従業員も相当悔しいはずで、それは思わず「FCK」と言いたくなるような心情だろう。それを謝罪文の中で言及するのではなく、あえてロゴに細工する。これに気づいた消費者を中心にSNS上で盛り上がり、報道効果もあってポジティブなムードに変わっていった。

レスポンスの早さだけを重視して立て板に水で謝るよりも、表情が出ているほうが人間らしくて許してもらえる。真摯な謝罪文に、ちょっと和ませるクリエイティブが効いているのだ。

僕が提唱する「戦略PRの6つのルール」のひとつに、「かけてとく」というのがある。現代では機知に富んだPRが必要だという視点だ。スピーディーにレスポンスしつつ、ちょっとしたユーモアやウィットを含ませる。SNSと報道が連鎖する時代には、こうしたセンスが求められるのだ。2019年にはどんな不祥事が発生するのか、それは誰にも分からないが、危機管理広報はもう少し進化するのかもしれない。ではまた来月!

本田哲也(ほんだ・てつや)

ブルーカレント・ジャパン代表取締役社長/戦略PRプランナー。「世界でもっとも影響力のあるPRプロフェッショナル300人」にPRWeek誌によって選出された日本を代表するPR専門家。著作、国内外での講演実績多数。カンヌライオンズ2017PR部門審査員。最新刊に『戦略PR 世の中を動かす新しい6つの法則』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)。

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