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本田哲也のGlobal Topics

ジェンダーイコールにPRはどう寄与する?

本田哲也

マッキャン・ニューヨーク社長のデヴィカ・ブルチャンダーニ氏。キャンペーンが生まれた背景やジェンダーイコールとビジネスの相関性、広告やPRの果たす役割など、1時間にわたる講演が参加者を魅了した。

2014年に開始した連載も早くも6年目に突入した。2019年も世界の広報PRのトピックスを厳選してお伝えしていきたい(目指せ100回!)。今後ともよろしくお願いいたします。

さて、2019年は年号も変わる「変化の年」。コミュニケーション業界も、様々な節目を迎えている。広告や広報における「ジェンダーイコール(男女共同参画)」の動きもそのひとつだ。今回は、12月6日に業界関係者300人を集めて開催された「ジェンダーとコミュニケーション会議」の基調講演からお届けしよう。

登壇したのは、2017年のカンヌライオンズPR部門グランプリを受賞した「Fearless Girl(恐れを知らない少女)」キャンペーンの責任者、マッキャン・ニューヨーク社長のデヴィカ・ブルチャンダーニ氏だ。

「なぜ、Fearless Girlがあれほど注目されたのか。その背後にある文脈を理解することが大事です」。そう口火を切ったブルチャンダーニ氏。投資会社であるステート・ストリート・グローバル・アドバイザーズ(SSGA)は、より多くの女性がリーダーシップを発揮している企業に投資するファンドを創設した。そのファンドのPRを目的に、SSGAはニューヨーク・ウォール街の有名な雄牛の銅像「チャージング・ブル」に真正面から立ち向かう、Fearless Girlの像を設置。世界的な話題を巻き起こすことになる。

「皆さん知っていますか?『ジョン』という名前のCEOのほうが、全女性CEOの数より多いのが現実です」と同氏。「アメリカでは、企業における白人男性の役員が63%。対して女性は22%です。このままでは、真のジェンダーイコールが実現されるまでに100年かかります」。データによると、女性役員がひとりでもいる企業はひとりもいない企業よりも5%業績が良い。「リーダーシップには男女双方の視点を合わせ持つことが重要なのです」。

2017年の3月7日、国際女性デーの前日の夜中に、Fearless Girl像はひっそりと設置された。「なぜ少女なのか。まず希望の象徴だということ。ブリーフケースを持った大人の女性像ではステレオタイプを助長してしまう。また幼い少女であることは、男性の心にも突き刺さるはずと思ったからです」。

設置後はわずか12週間でTwitterのインプレッションが46億に到達。ファンドの売上は400%アップし、これを機に女性役員の登用を決めた企業は実に301社にのぼった。

「男性が偉いとか、女性が強いとかいう議論ではありません。私たちには常に『選択肢』がある、ということなのです」。そう締めくくると、会場からは大きな拍手が送られた。社会を変えるPRに、2019年もチャレンジしていきましょう。ではまた来月!

本田哲也(ほんだ・てつや)

ブルーカレント・ジャパン代表取締役社長/戦略PRプランナー。「世界でもっとも影響力のあるPRプロフェッショナル300人」にPRWeek誌によって選出された日本を代表するPR専門家。著作、国内外での講演実績多数。カンヌライオンズ2017PR部門審査員。最新刊に『戦略PR 世の中を動かす新しい6つの法則』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)。

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