記者と広報は、なぜすれ違う?第一線で活躍するメディアの記者に本音で語ってもらいました。
全国紙 記者 Aさん(女性)記者業界で定番の警察回りを経て念願の企業取材の担当に。深夜早朝に取材関係者宅を回る「夜討ち朝駆け」などの仕事量は減った。しかし理想と現実は遠く、経済紙・専門紙に出し抜かれることも多く苦労している。 |
「それなら載せなくて結構ですっ!」。都内のとあるホテルの豪華なイベント会場。日用品のメーカーなど数社が協賛しての共同販促イベントが開かれている中、男性にしては高めのヒステリックな声が響いた。取材に来ていた私はもちろん、一緒にいたイベントの主催者、一般の参加者たちまでも体をビクッとさせた。
叫んだのは、このイベントに参加している某有名日用品メーカー広報のX氏。まだ若く、広報歴がどれくらいかは分からない。周囲からちょっと強引な人と聞いていたが……。
「載せなくてもいい」は、記者側が聞くと最も失望させられる、いわば「負の殺し文句」のひとつだ。当然ながら、記者は取材する気を失う。記事を書くかどうかはメディア側が決めることだし、紙面で扱う意義があるのではと感じたから取材に足を運んだだけだ。決して取材対象企業の損得やご機嫌を「忖度」するモノではない。企業に取材を断る自由があるのと同じく、メディアにも書く・書かないを選ぶ権利がある。
気が弱い記者すらキレたひどい顛末
発端は取材日の数週間前にさかのぼる。担当業界ではなかったが面識のあったX氏から、数社合同のイベントを取材しないかと打診を受けた。詳しい内容はつかめなかったが、話題ものの記事として他社の動きとあわせて紹介するならありかなと考えていた。
すると取材当日に問題が噴出した。事前に聞いていた内容と違う。「今後もそのイベントでの販促活動を継続して行う」と聞いていたのだが、フタを開けるとその日で終了するとのこと。終わってしまった話はちょっと載せづらい。規模も想定していたより小さく、私は頭を抱えた。
加えて、X氏はイベントに参加している他の日用品メーカーへの取材をしないよう言ってきた。相手が個人であれ公権力であれ、メディアは「取材するな」という言葉に過剰反応する。ましてや一般に公開されているイベントで、出展しているのは一般に名の知れた企業だ。他社が取材を禁じる権利はないだろう ...