2014年に創業80周年を迎えたYKKが翌年に完成させた「YKK80ビル」。建物の外にも内にも自社のアルミ建材をふんだんに使ったビルで、世界からも高く評価される省エネ性能と、アットホームな機能が満載だ。

エントランスホールの天井は、豪華絢爛なシャンデリアかと見まがうほどきらびやか。実はこれは、Y型をしたアルミ押出形材と照明のみの演出である

この本社ビルのために開発されたY型の形材。外装にも屋内の装飾にも使用されている
2015年6月に竣工したYKK、YKK AP両社の新本社「YKK80ビル」。社名の頭文字にも通じる「Y型」のアルミ形材を日射を防ぐスクリーン用に開発し、ビルの正面をこのY型形材によるスクリーン(アルミすだれ)で覆った。
近代的で斬新な外観に目を奪われがちだが、「社員が働きやすいオフィス」という点を最も重視した。2011年には外部識者の指導のもと、社内で「ワークプレイス研究会」を発足させ、3年以上にわたる検討や実証実験を進めてきた。その結果、できるだけ社員の視界を遮らないよう執務フロアにおける机周りのパーテーションとキャビネットの高さを下げたり、エレベーターや階段などの縦動線を外周部に分散配置したりするなど、一体感のある見通しのよいオフィスを実現した。
さらに、ビルの設計を始めたころに東日本大震災が発生したこともあり、免震構造や、水害に備えて主な設備機器は屋上に設置するなど、災害に強い構造と設備が導入された。消費するエネルギー量も、一般的なオフィスビルに比べて約60%の削減を目指しており、社内のサイネージには月別・フロア別の省エネランキングなどが掲示されている。
大きな特徴として、新築オフィスビルとしては日本で初めて米国のLEED-CSでプラチナ認証を取得するなど、国内外の様々な認証・表彰で環境建築として高く評価されている点も挙げられる。「グローバルスタンダードになりつつあるLEED認証を取得することは、海外の方々に当社の環境に配慮した経営・事業活動について説明する際の材料にもなりうる。今回のオフィス設計で当初から目標としていました」と広報担当者は語る。
外部の評価を得ることによって視察や取材を受ける機会も増え、オフィスだけでなく、経営理念や社員に対する考え方を対外的に大きくアピールする場ともなっている。
外装とのつながりを感じさせる内装

正面側は全面Y型の形材による「アルミすだれ」に覆われている。自動制御のクライムアップ式のブラインドとともに西日の厳しい日射をやわらげつつ …