キリンビールが2020年に発売した国産ウイスキーブランド「陸」。2022年4月のブランドリニューアルを機に、売上を大きく伸ばしている。同社のウイスキー製品として史上最大規模のプロモーションも行った「陸」のヒットの要因を聞いた。
DATA
商品名:キリンウイスキー 陸
実勢価格:500mlびん1430円(税込)、4000mlペットボトル8800円(税込)
主な販路:酒類販売店、スーパーマーケットなど
ウイスキー「陸」誕生の背景 なぜ、競合の多いタイミングで?
──「陸」開発の背景と、商品の特徴を教えてください。
キリンといえばビールのイメージが強いと思いますが、実はウイスキーにも長い歴史があります。当社のウイスキーブランドをつくっている富士御殿場蒸溜所は1973年操業。昨年11月に50周年を迎えています。
日本の経済成長期にウイスキーは「出世の酒」として役職が上がるにつれて飲むことができる銘柄も変わる、憧れのお酒でもありました。
その後、飲むお酒の多様化に伴いウイスキー自体の人気低迷もありましたが、2009年前後からのハイボールブームやテレビドラマの影響で市場が回復。また、国際的な賞の受賞もあり、世界的に「ジャパニーズウイスキー」の地位が高まってきていました。国際的ウイスキーコンテストの「ワールド・ウイスキー・アワード」で2016年、17年、19年に『富士御殿場蒸溜所シングルグレーンウイスキー AGED 25 YEARS SMALL BATCH』が「ワールド・ベスト・グレーンウイスキー」を受賞し、世界最高峰のグレーンウイスキーとして認定され、当社もあらためてウイスキー事業に注力することに。そこで、2019年に樽熟成庫の増強を始め、発酵・蒸留設備の新規導入と、既存ウイスキーブランドの整理・再編によって2020年に誕生したのが「富士」と「陸」です。
富士御殿場蒸溜所でつくるウイスキーのユニークさはウイスキー事業立ち上げ時の成り立ちにあります。
一般的なウイスキーは本場スコットランドの技術をベースにしている場合が多い傾向にあるため、モルトウイスキーが主役であることが多いです...