スポーツと連携したブランドプロモーションでは、その影響力ゆえに担当者が気を付けるべき点も多い。企業が陥りがちな思い込みはどのようなものなのか、アスリートや契約先と共通の価値観を共有するためにはどうすればよいのか。スポーツファンの熱量を味方につけるための注意点について話を聞いた。
ファンが一丸となって応援し、日本全体が盛り上がるのがスポーツイベント。そんなスポーツの力を活かしたプロモーション施策を展開するにあたって、担当者はどのような点に注意していくべきなのか。スポーツマーケティング分野においてさまざまな団体・企業にて施策を行ってきた渋谷未来デザイン 理事/事務局長の長田新子氏に話を聞いた。
なりたいビジョンの共有
まず長田氏はプロモーションを行うにあたり、「企業としてのビジョンをしっかりと契約先に共有すること」が大切だと話す。
「スポーツプロモーションには、“話題になりやすい”、“自社の認知拡大” といった効果がありますが、それらを得るためにはまず、そのスポーツを応援しているファンに『好きなチームを一緒に応援してくれている』と感じてもらうことが必要です。ファンの共感を得るためにはスポット的な短期施策に終始するのではなく、長期的な視点でそのスポーツ業界全体を盛り上げる意識を持つことが重要でしょう。しかし、世界大会やイベントが実施されるタイミングで短期的にキャンペーンを行う企業が多いため、埋もれてしまって印象に残らないといったこともあります。そういった背景も踏まえると、企業・ブランドは長期的な視点を持って、そのスポーツまたは起用したアスリートが目指している目標と、企業のなりたい姿が同じ方向を向いていることを施策で示していくことが重要です」(長田氏)。
メディアへの出演を目標のひとつにしているタレントとは異なり、アスリートの最終目的は自身が行っているスポーツのフィールドで活躍すること。企業は長くそのスポーツシーンを支え、応援するファンを一緒に増やして盛り上げる気持ちで取り組むことが必要不可欠だと言えるだろう。そうすることで初めて、スポーツファンが企業のファンとなり、企業・ブランドの価値向上や長期的な認知・売上拡大につながる、と長田氏は話す。
試合の話題性に依存しない
スポーツと連携したプロモーションは長期的な取り組みによって効果が現れるとはいえ、観戦しながらスタジアムで楽しめる飲料ブランドなどは、スポーツイベントの開催やチームの勝利などによって特別需要が発生しやすい印象だ。スポーツプロモーションと相性の良い商材やアプローチ手法について長田氏は次のように話す。
「低価格帯、手に取りやすいサイズといった商材はもちろん購買のハードルが低いので特需が起きやすい傾向に…