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スポーツと高めるキャンペーンの効果

新たな観戦スタイルがもたらすスポーツビジネスの可能性とは

林正浩(大和総研)

バレーや水泳、ラグビー、バスケットボールなど多くの世界的スポーツ大会で盛り上がった2023年。企業のプロモーション担当者としては、スポーツ領域において今後伸びていくであろう成長市場について知っておきたいところ。本稿では今後のスポーツビジネスの展望について掲載する。

コロナが明けて回復基調にあるスポーツ観戦市場。本稿では、今後の市場推移と成長領域について述べます。まず三菱UFJリサーチ&コンサルティングとマクロミルの共同調査「2022年 スポーツマーケティング基礎調査」によると、2022年のスポーツ観戦市場の市場規模は、2021年対比約37%増の推計3827億円。2020年の4139億円には及ばなかったものの明らかに復調しています。2023年にはコロナウイルスのいわゆる5類への移行が追い風となり、その市場規模は2015~2016年の水準に回復する可能性もあるでしょう(図1)。

(出所)スポーツマーケティング基礎調査(三菱UFJリサーチ&コンサルティング・マクロミル共同調査)を参考に大和総研作成

こうした動きに伴い、コロナ禍の影響を強く受けて、収益が減少傾向にあったプロモーションメディア、特にスポーツビジネスと関連の深いイベントや展示・映像領域の復調も期待されます。

スポーツの体験型パッケージ

そうした期待もあり、ライブエンターテインメントへの渇望感が増すなか、プレミアムなスポーツ観戦スタイルとしての「スポーツホスピタリティ」がにわかに脚光を浴びています。スポーツホスピタリティとは、簡単に言うと「スポーツコンテンツを中心に飲食やグッズ、各種エンターテインメントも提供するハイエンドな体験型パッケージ商品」と定義されるものです。

スポーツ観戦が生活に溶け込んでいる欧米では珍しくないスポーツホスピタリティですが、まだまだ日本では馴染みがないように思われます。

「体験型パッケージ」の具体例としては、パッケージ申込者専用動線・専用入口の設置やお気に入りの選手との限定フォトセッション。また、独自のアクショントレース(映像分析)をもとにした試合解説やミニコンサート、プレー終了後の選手たちとのコミュニケーションなどを付帯させることもあります。パッケージ商品という点では各種旅行商品に近く(実際に移動手段や宿泊がセットとなるケースもあります)、他にはない独自の体験価値をデザインできるかが、観戦者を惹きつけられるかどうかのポイントとなります。

ちなみに、海外市場調査レポートの販売を行うGII(グローバルインフォメーション)の市場調査レポートによると、世界のスポーツホスピタリティ市場は2021年の実績ベースで約84億ドル、2028年には実に約211億ドルに達すると予測されています。スポーツへの向き合い方が欧米と日本とでは異なるとはいえ、前述の国内スポーツ観戦市場全体と比べても桁外れに大きなマーケットであることがわかります。

さらに「PwCスポーツ産業調査(第7版)」によると、世界のスポーツ産業全体の中で「チケット・ホスピタリティ」セクターの今後3~5年の年間成長率は2021年の2.5%から2022年の4.5%へと上方修正されており、リアル観戦の復調も予測されています(図2)。

(出所)PwCスポーツ産業調査(第7版)を参考に大和総研作成

贔屓のチームの試合を個人的に気の合う仲間や法人取引先と楽しむことはもちろん、観戦前・観戦後も含めて新たなエンターテインメントとしてデザインし、ファンエンゲージメントを高めることこそスポーツホスピタリティ商品最大の特徴。toC、toBどちらにとっても「上質なトキ商品」と言い換えられるものでしょう。直近の我が国におけるケース

としては、「カーネクスト2023 WORLD BASEBALL CLASSIC™ 東京プール 公式ホスピタリティプログラム」が想起されます。あくまでも一例ですが、観戦チケット以外にもさまざまなサービスが付帯されているのが特徴です(図3)。

(出所)WORLD BASEBALL CLASSIC™ウェブサイト 〈https://www.wbc2023.jp/news/article/20221221_2.html〉

また最近では、大都市で開催される野球やサッカー、ラグビーをはじめとしたメガイベントやプロスポーツの試合だけでなく、地域ロイヤルティ醸成の観点から地方のスタジアムやアリーナで開催される比較的小規模な試合においても独自のホスピタリティプログラムを導入しようとする動きもあるようです。

スポーツホスピタリティのターゲットとなる顧客の割合は、イギリスのスポーツホスピタリティ会社「スポーツトラベル&ホスピタリティ(以下、STH)」調べでは、現状概ね法人7に対し個人3となっています。しかし、今後は市場形成期にある法人市場だけでなく、全くのフロンティアである個人を主体とする各種コミュニティを開拓することも必要でしょう。そうして日本におけるスポーツホスピタリティのすそ野を拡大し、文化として醸成することが…

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