今年9月~10月に開催されたラグビーワールドカップ2023 フランス大会。この世界的なイベントのオフィシャルビールに選出されたのが「アサヒスーパードライ」だ。フランスの厳格な広告規制を乗り越え、いかにして世界のラグビーファンを熱狂の渦に巻き込んでいったのか。その詳細をアサヒビールの石川勇気氏に聞いた。
2019年日本での開催以来、4年ぶりの開催となったラグビーワールドカップ フランス大会。日本代表の奮闘も記憶に新しいが、その試合会場でビールの独占販売契約を結んでいたのがアサヒスーパードライだ。日本のビールメーカーとしては初の快挙となったその裏側で、アサヒビールは日本とは全く異なる広告の掲出事情に対応していた。アサヒビール マーケティング本部の石川勇気氏は、その経緯を次のように説明する。
「フランスではスポーツ施設内におけるアルコール提供や広告が厳しく制限されています。今大会では、スタジアム内のアルコール販売は特別に許可されたのですが、商品名の広告掲示は認められませんでした。そこで考え出したのが、正規ロゴをもじったアイデアでした」。
同社ではスポンサーが決まった時から、規制をポジティブに乗り切るためのプロモーションアイデアを検討してきたという。
「どうすれば規制を遵守しつつ大会を盛り上げられるのか、私たちは社内でずっと考えてきました。その結果、採用したのが『SUPER TRY』や『辛口』などのロゴ表示だったのです」(石川氏)。
商品名の「スーパードライ」とラグビーの得点方法のひとつである「トライ」をかけた「SUPER TRY」。また、あえて「辛口」の表記を漢字のまま掲示したことでそのギャップがSNS上で話題を呼んだ。
それだけではなく同社は、商品名のアピールにつながるよう、ハイライト映像などの動画配信サービスではロゴをデジタル加工。もじった部分を正規の「SUPER DRY」ロゴに差し替えられるようにした。
リアルタイム性の高い発信
一方国内では、実際の売上拡大につなげるため、今大会のオフィシャルビールに選定されてから、料飲店や量販店の販売網を活かした施策を実施。その他オリジナルラグビー缶の発売や応援グッズ、現地の日本戦観戦チケットが当たるキャンペーンなど、さまざまな施策を展開していった。
また今年の年初には、よりオープンでスピード感…