コロナ禍は、生活者の価値観を大きく変化させました。同時に加速したデジタル化が店舗運営にどのような影響を与えるのか、注目が集まっています。今回は電通デジタルの岡本静華氏が、実際の調査から生活者の価値観変化を捉えながら、見えてきた社会の変化と共に、これからの店舗に求められる条件について解説します。
2020年1月、前触れもなく訪れた新型コロナウイルスの脅威に、“ヒト”も“モノ”も“コト”も変化を余儀なくされました。ヒトはモノとの接触を避け、デジタル化が進み、行動パターンや価値観にも大きな影響を与えました(図表1 参考)。
2023年5月以降、季節性インフルエンザと同等の「5類感染症」に移行した新型コロナウイルス感染症。まさに“ウィズコロナ”となった今、ヒトとヒトを取り巻く環境は新たな変化を迎えようとしています(図表2 参考)。
社会に変化が起きると、人々は基本の行動に戻る傾向があると言われています。この“原点回帰”の傾向は、今後も継続すると思われますが、非接触の緩和によって、生活者は行動に対する判断軸や優先順位を見直す機会となりました。
原点回帰で加速した Physical×Digital
半強制的なデジタル化によって、スマートフォンの普及が加速。それにより「いつでも、どこでも、誰とでも」ネットワーク上でつながることが当たり前になりました。さらに、AIの社会実装や5Gにより、世界では操作主体がヒトではなくコンピュータになると言われています。ここではそれを“アンビエント”な世界と表現します。
ヒトはアンビエントな世界へと移行することにより、様々なストレスから解放されるはずでした。しかし、新型コロナウイルスの流行によって背反的に発生した「慎重に判断したい」「私が決めたい」という消費へのインサイトが、Physical(フィジカル)とDigital(デジタル)が融合した“Phygital(フィジタル)”という概念を加速させることになります。
3IPと顧客への心地よい判断委譲が重要
Phygitalとは、OMOの一歩先を示している概念です。オフライン・オンラインにとらわれずに、多様な接点を通じて取得できるデータを活用することで、生活者自身が消費行動を自由に創造できる状態のことを指しています。
Phygitalな状態を実現するためには、3つの「I」と1つの「P」からなる「3IP」が必要です。
また、Phygitalでは、生活者に...