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成長が続く店の条件

元ラーメン店主の公認会計士が読み解く 現代の経営戦略

石動 龍氏

店舗の運営に携わるオーナーたちが直面している悩みが多様化しています。売上の向上や顧客獲得戦略、人材確保やコスト管理、競争の激化に対する対策など、さまざまな課題が山積みです。公認会計士として課題解決に取り組みながら、自らも店舗経営の経験を持つ石動 龍氏に、今日的な経営課題とその解決策を探ります。

私は、青森県八戸市で公認会計士等の個人事務所を開く傍ら、副業としてワイン小売店の経営を行っています。八戸市は太平洋に面する港町で、人口は約22万人。漁業と重工業が主要産業でしたが、現在は人口減少の傾向にあり、商業エリアも閉店が続いている状況です。私が2020年10月に開店したラーメン店「ドラゴンラーメン」は人気が集まり、開店前は毎日大行列ができるほどでした。しかし、原材料の高騰や人材不足によって利益が減少し、2022年10月に閉店。集客力があっても、利益を上げることができなかったため、閉店は正しい判断だったと考えています。

経営するラーメン店 人気の中で閉店した理由

2023年6月、イベント内で復活したところ、開店時に100人近くが行列し、2時間で400杯を売り上げました。これほどの人気を集めたものの、今のところ再びラーメン店を開きたいとは考えていません。閉店時より原価はさらに高騰、働き手の確保も厳しくなっており、労力に対して採算を合わせることがとても難しくなっていると感じているためです。

ワイン小売店「ヴァンタス」も、経営は厳しくなっています。地元産の八戸ワインや、フランスやアメリカなどの海外ワインを扱っているものの、円安により海外ワインの仕入価格は上昇。さらに、社会情勢の影響から、原油やガスなどのエネルギーコストは高騰を続け、物流コストも高騰の一途をたどっています。

新型コロナウイルス感染症拡大の影響により生活様式が一変した2020年から現在まで、小売店や飲食店など、店舗オーナーを取り巻く環境は変わりました。コロナ禍に発生した“消費控え”は落ち着いたものの、会社主導の忘年会などの行事については、復活の兆しは強く感じられません。

このような状況下で、経営に苦しむ店舗オーナーは増加しています。私は、本業である税理士や公認会計士として、店舗オーナーの悩みを聞く機会が多くあります。その内容は大きく分けて、次の3つです。

① 原材料や商材、光熱費などのコスト上昇
② 労働力不足による人材難
③ ライバル店の増加などによる販売機会の減少

多くのオーナーは、前述の課題に苦しんでいるのではないでしょうか。それでは、それぞれの原因と対策を解説していきたいと思います。

価格交渉力弱者の小規模事業者

ラーメン店の開店時(2020年)と、閉店時(2022年)を比較すると、植物油は40~50%、麺は30~40%、電気代とガス代は30%と、毎月の支払額が増加しました。値上がりしなかったものはほとんどなかったように思います。

飲食店に限らず、小規模事業者は価格交渉力がありません。例えば、ラーメン店であれば、肉は精肉業者、煮干は海産物卸問屋、野菜はスーパー、麺は製麺業者から仕入れることが一般的。どの取引も、自分より規模が大きい業者を相手にすることになるからです。仕入価格が上がる際は値上げの通知を受け入れるしかありません。取引のボリュームが小さい小規模店は、価格交渉を試みても、多くの場合は断られてしまいます。

それぞれの業者も同じです。仕入れや輸送などのコストが上がっており、値上げせざるをえない事情を抱えています。卸売業者も赤字になれば事業継続が難しくなるため、値上がり分が仕入価格に転嫁されるのは当然といえるでしょう。

店舗経営に限らず、事業は利益を確保しなければ継続が許されません。借入の返済や税金の支払いは確保した利益から行うことになるため、利益がなければいずれ支払いが滞り、キャッシュが枯渇して仕入れが不可能になります。つまり、店舗運営を継続するためには、必要な利益を確保することが必須です。

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しかし前述の通り、店舗のランニングコスト上昇につながる要因は複数発生しています。利益を...

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