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ヒットの仕掛け人に聞く

自発的な手洗いを習慣化し、売上ナンバーワンブランドとなった「キレイキレイ」の25年

キレイキレイ

1997年に誕生したライオンのハンドソープ「キレイキレイ」は、固形石鹸が主流だった手洗い石鹸市場を大きく変える商品となった。25年を超えて愛される「キレイキレイ」について、ブランドマネジャーの小西真梨氏に聞いた。

※2002年1月~2022年12月シリーズ累計販売金額
インテージSRIハンドソープ市場(ボディ石鹸除く)

    DATA

  • 販売名:キレイキレイ薬用ハンドコンディショニングソープa(医薬部外品)
  • 小売価格:オープン価格
  • 主な販路:ドラッグストアなど

ハンドソープ市場を拡大したキレイキレイ

──あらためて25年前の誕生経緯を教えてください。

「キレイキレイ」が誕生したのは1997年です。その前年、大阪でO157による集団食中毒事件が発生し、清潔に対する関心が高まっていました。親はしつけとして手を洗ってほしい、一方の子どもは押しつけを嫌がるという負の連鎖がありました。

当時、実際に手を洗う場面ではまだ固形石鹸が主流でした。こうした市場環境で、「キレイキレイ」は手洗いの習慣化を社会的使命として開発しました。

全ての人が自発的に手を洗い、その習慣を家庭に浸透させるためには“バイ菌は怖いもの”という恐怖訴求よりも、手洗いを少しでも楽しい行為にすることが必要だと考えました。

そこで家族の清潔と健康を願う母親の愛情を意識したキャラクター「キレイママ」を起用しています。「キレイキレイ」という商品名も「〇〇しようね」と動詞化できるような言葉として選ばれています。手を洗う行為と商品名がリンクし、キャラクターも含めて楽しい習慣になればという思いが込められています。

──すぐに消費者に受け入れられたのでしょうか。

「キレイキレイ」の登場によってハンドソープ市場は一気に拡大、使用率も上昇しました。発売開始後しばらくして売上シェアナンバーワン※を獲得。2000年代に入ってからは現在までの21年間トップの座を維持しています。



商品
1997年に誕生した「キレイキレイ」。「薬用」としての機能を備えつつ、手洗いを習慣化することを目指す「楽しく洗えるハンドソープ」という地位を確立した。2004年には泡で出るタイプ、20年には「ハンドコンディショニングソープ」の発売など、時代や環境に合わせた商品開発を進めてきた。2000年代に入り、21年連続で売上シェアナンバーワン※を誇るハンドソープを代表するブランドとなっている。

※2002年1月~2022年12月シリーズ累計販売金額
インテージSRIハンドソープ市場(ボディ石鹸除く)

消費者、販売店のニーズに応える新商品

──2020年の3月にはハンドコンディショニングソープを発売しています。

コロナ禍の発売になりましたが、コロナ禍を意識して開発したわけではありません。ハンドソープ市場では低価格帯アイテムが9割を占めるようになり、購買単価の低下がメーカー、販売店の課題となっています。そこで消費者のニーズに応え、販売店の課題も解消するようなアイテムが必要でした。

18年の当社調べでは、菌から家族を守りたいと思う子育て女性は約9割存在しており、きちんと殺菌したい半面、手の乾燥や手荒れが気になると回答していることもわかりました。そこで、キレイキレイの強みである、殺菌力、石鹸成分による汚れ落ちと、当社の技術である手肌のうるおいを保つ吸着保湿技術を兼ね備えた「キレイキレイ薬用ハンドコンディショニングソープ」を開発しました。

デザイン面では、清潔感や安らぎを表現するマットな乳白色や柔らかなシェイプのボトルで、家の洗面所で自然になじむようにしました。発売開始後、順調に販売数を伸ばしており、販売店の購入単価アップにも貢献できていると感じています。

SNS
2020年に発売した「ハンドコンディショニングソープ」は、シンプルなボトル形状もあり人気を集めている。店頭での視認性よりも、生活に寄り添う色、ボトルデザインを選んだ。結果、SNSで画像付きでの投稿も多く見られている。昨今の社会情勢の変化により在宅時間が増えたこともあり、身近な場所にはシンプルなデザインをという消費者のインサイトにもマッチし、付加価値のある商品として累計販売520万個(2020年3月25日~22年12月)を超えるヒット商品となった。

大切な人のための衛生習慣をつなぐ「キレイのリレー」

──発売から25年。コミュニケーションに変化はありますか。

キャラクターになっているキレイママ、よしおくん、よしこちゃんのデザインは、発売当初から変わらず上田三根子さんに担当していただいていますが、時代の変化に合わせて少しずつ変えています。キレイママの服装や、3人の位置関係などを見直してきました。20年のリニューアルでは家族のスキンシップが感じられるデザインが採用されています。

ただ、そうした変化はこちらから特別に訴求はしていません。消費者が商品に触れたときにどう感じるか、その感覚に合わせていくことができる商品でありたいと考えています。実際、気づいていない人も多いと思いますが、気づいたときに腑に落ちるものであればいいなと願っています。

キレイママ
誕生以来パッケージにその姿を残しているキレイママ、よしおくん、よしこちゃん。イラストレーターの上田三根子さんが手がけたキャラクターは、社会環境や女性の社会進出、衛生に対する意識の変化を受け、25年間で少しずつ変化してきた。2020年からはスキンシップと親子の絆づくりをイメージしたデザインが採用されている。

──21年からは「キレイのリレー」プロジェクトもスタートしています。

誕生以来、家族を中心とした衛生習慣を訴求してきましたが、昨今の社会情勢の変化を機に、コミュニティ単位での衛生意識の向上が重視されるようになりました。私たちは、手洗いが自分のためだけではなく、大切な人を守るためであり、その結果が家族も含めた全員のためになるというサイクルを作りたいと考え、「キレイのリレー」を始めました。暮らしの場面だけではなく、働く場、学びの場、遊びの場でも衛生習慣を広めていくものです。

具体的には私たちの考えに賛同してもらえる企業、組織などをパートナーとして一緒に衛生に関する取り組みを実施し、アンバサダーになってもらっています。すみだ水族館(東京都墨田区)では、親子で来館される方も多く、親子向けを中心に展開している「マイボトルキャンペーン」も実施しました。「キレイのリレー」も含め、これからも「キレイキレイ」ブランドは衛生習慣を広め、将来的には日本だけではなく、世界的にも人々が快適に過ごせる世の中にできればと考えています。

キレイのリレー
2021年にスタートした「キレイのリレー」。昨今の社会情勢の変化もあり、衛生習慣で守る対象を「大切な人」と再定義。大切な人を守りたいと思う気持ちを一人ひとりがつなぎ、人と人が寄り添う前向きな社会を実現するための取り組みだ。

「くらす」、「はたらく」、「まなぶ」、「あそぶ」の各シーンにおいて、考えに賛同する企業や組織をパートナーとし、さまざまな取り組みを行う。すでに、すみだ水族館や加古川市、JR九州などが参加している。「キレイのリレー」はパートナーが独自に行う衛生面での取り組みの信頼性を高めることにもつながり、ブランド、パートナー、社会の三方よしの取り組みになっている。



今月の仕掛け人

ライオン
ハウスホールド事業本部
ビューティケア事業部
キレイキレイグループ
マネジャー
小西真梨氏

2005年入社。営業担当を経て、2008年に制汗剤「Ban」の企画開発を担当。13年よりキレイキレイの企画開発担当を経て、20年より現職。キレイキレイ製品の戦略、企画、開発、営業など、ブランド全体の統括リーダーをつとめる。

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