ユニークかつ効果的なプロモーションを展開する企業のトップに、どのような視点で販促を考え、展開しているのかを聞く。

フィールドエコ 代表取締役
井口忠寿(いぐち・ただとし)氏
1982年、慶應大学法学部法律学科卒、同年旭化成工業入社。88年退社後、米国プロセスオペレーターズの日本法人を設立、代表取締役に就任。92年、家業である朝日新聞販売店ASA用賀の代表取締役に就任。96年、フィールドエコを設立、代表取締役就任。
主婦や高齢者を中心にリピート購入
創業61年の老舗新聞販売店がことし6月にスタートした、高級食パンのベーカリー「くちどけの朝じゃなきゃ!!」が、連日完売するほどの人気を博している。主に口コミで評判を集めているようだ。
販売している食パンは、きめが細かく甘みがあり口どけが良い「おめざの幸せ」(900円・税込)と、口どけの良い生地に、ジューシーなレーズンを練り込んだ「完熟モーニング」(1100円・同)の2種類だ。重量はどちらも2斤。
店舗は東急田園都市線・用賀駅(東京・世田谷)から徒歩1分、駅前の商店街の中にある。午前10時から午後8時までの開店中は、主婦や高齢者、会社帰りの女性会社員などが、ひっきりなしに立ち寄る。店舗の告知は、店舗のオープン時に入れた折込広告のみ。あとは口コミで評判が広がっていった。
ベーカリー事業を始めた背景には、新聞購読を取り巻く環境の変化も大きい。
「くちどけの朝じゃなきゃ!!」を運営するフィールドエコの井口忠寿社長は、こう話す。
「新聞を購読する世帯が減っていき、折込広告もそれに連動して減少傾向です。販売店との関係も、時代とともに変化があり、新聞販売店の経営は厳しくなる一方です」
そのため、これまでにもカルチャースクール、ポスティング、ランドリーなど、新聞販売以外の事業に取り組んできた。しかし、いずれの事業も新聞販売の落ち込みを補完できる本格的な事業には育たなかった。
では、ベーカリー事業はなぜ軌道に乗ったのか。
「パンの製造・販売と、新聞販売の親和性の高さ、が理由のひとつにあると思います。新聞販売店は朝が一番大事な時間帯ですし、パン屋さんも朝早くからパンを焼き始める。顧客にとっても、新聞もパンも、どちらかと言えば『朝』というイメージが強いはずです」
そもそも、パンと新聞には相性の良さがある。双方とも『朝』を演出する役者とも言えるだろう。逆にこれまで取り組んだ事業は、「朝を演出する新聞販売店」というバックグラウンドが生かし切れていなかったのかもしれない …