ユニークかつ効果的なプロモーションを展開する企業のトップに、どのような視点で販促を考え、展開しているのかを聞く。
居酒屋定番メニューの焼き鳥 コスト尊重あえて提供なし
激安の大衆居酒屋「一軒め酒場」がオープンしたのはいまから10年ほど前の、2008年12月のこと。以来、中高年の男性客を中心に支持を集め、店舗数、売上高ともに伸長を続けている。
「中高年の男性が、ひとりでも、あるいは友人や会社の同僚などと一緒でも、気軽に、頻繁に利用できる店舗を作ろうと開発しました。ひと月に何回も利用してもらおうと考えましたので、メニューの価格を"激安"にしたのです」と話すのは、「一軒め酒場」ほか複数の居酒屋ブランドを擁する養老乃瀧の谷酒匡俊・執行役員だ。
「一軒め酒場」は現在、全国に72店舗を展開している。アルコール類がサッポロ生ビール黒ラベル〈樽生〉(中ジョッキ)390円、酎ハイ・サワー190円、生ビールとウイスキーをブレンドした「一軒め酒場」オリジナルの「バクハイ」290円、おつまみは枝豆、冷奴が各180円、鶏皮やわらか味噌煮1本130円、牛もつ煮込み330円と、確かに安い(価格はいずれも税抜)。
「『一軒め酒場』で扱う食材は、基本的に『養老乃瀧』と共通です。激安だからといって、"安かろう悪かろう"のメニューにはしません。『養老乃瀧』と同じ食材を使いつつ激安を実現するため、備品や光熱費、店頭スタッフのユニフォームなど、食材以外は細かな点までコスト削減を徹底的に追求しました」
店舗運営のコストを下げるため、調理担当がつきっきりで焼かなければいけない焼き鳥はメニューから外した。店舗の内装も、酒場然とした雰囲気を出す必要最小限度に留めた。
「『一軒め酒場』のライバルは業態で言えば実はコンビニエンスストア。お酒の楽しみ方という側面では、いわゆる『家飲み』です。『一軒め酒場』が利用者に支持されたのは、安価で『養老乃瀧』と同じレベルのメニューがお店で食べられるという点が大きいと考えています」 …