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ヒットの仕掛け人に聞く

真の「欲求」を見抜いた商品開発でカテゴリー全体を活性化

キリンビール 本麒麟

2018年3月に発売したキリンビールの新ブランド「本麒麟」が好調だ。累計販売数は2019年の5月時点で5億本を突破、同社の新商品としても過去10年で最も売れた商品となっている。「本麒麟」はなぜ消費者の心をとらえることができたのか、同社マーケティング部 ビール類カテゴリー戦略担当 アシスタントブランドマネージャーの永井勝也氏がその理由を語る。

消費者満足の裏にある「不安」を見抜く

──ブランド誕生から2年めを迎え、現在の販売動向はいかがでしょうか。

「本麒麟」は2018年3月の販売開始時にかなりの売り上げを記録しました。当社の新商品としては過去10年でも圧倒的で、2番めに売れている商品と比較しても1.5倍近く売れました。

通常、ビール業界で新商品には「2年めのジンクス」があると言われていますが、3月にリニューアルした効果で、発売以来最高の販売を記録し、翌月はさらにそれを超えるような状態で、2年めのことしも昨年を大幅に上回る勢いで売れています。

早くも当社の主力ブランドに迫る販売力を付けているヒット商品ということで、会社を挙げて、より多くのお客さまに価値を提供できるメジャーブランドに育てていきたいと考えています。

──新ブランドを誕生のきっかけは。また、ここまでヒットした要因をどのように分析していますか。

現在の日本では税制の関係上、ビール系のアルコール飲料は麦芽比率などにより「ビール」、「発泡酒」、「新ジャンル」で価格帯が分かれています。

これまでビール業界では、麦芽量が多いと飲みごたえがあり、少なくなるとスッキリした飲み口になるというイメージが定着していました。

新ジャンルは誕生以来10年近く「スッキリ飲みやすい」という特徴を訴求し、販売も伸びていたために消費者も満足していると考えられてきました。実際、調査をしても大半の人が現状の新ジャンルに満足しているという結果が出ていました。

しかし、飲用実態に関する質問を深くして、友人が来たときや、週末に何を飲むかを聞くと「ビール」という回答が多数出てきました。デイリーに飲むものとなると支出面で妥協し、コストパフォーマンスを優先して商品を選びます。

さらに、人は習慣化したものに対して、それを選択した判断を自身で正当化する傾向にあるので、現状の範囲で満足感を見つけようとします。それが「いまの銘柄に満足している」という調査結果が出た理由でした。消費者の本音は、やはりおいしいビールを日々飲みたいのだとわかりました。

いまの消費者を見ると、その大半は本音ではビールを飲みたいと思いながら新ジャンルを飲んでいる。この消費者の不満を解消し、カテゴリーを超えて圧倒的に美味しい、お客さまが最も期待している本格的なうまさで差別化された、最高品質の商品を開発すれば、新ジャンル内で新しいポジションを獲得できると考えました。

ビール業界では、ターゲットについて「ビール好き」と表現しますが、これまでは複数のジャンルがある中でも狭義のビールを選び、飲み続けている人を「ビール好き」ととらえていました …

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