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THE CITY BEYOND CITIES

ロンドンの展望

小西純子

英国と日本には共通点がある。島国で、人口密度が高い。かたや武士道、かたや騎士道。象徴君主を置き、お茶が好き。全く異なる点もあるが、英国のいまは、ヒントになるだろう。現地からのレポートをお送りする。

ジンメーカーが経営するホテル「The Distillery」。看板にある「ロンドン・ドライ・ジン」とは、連続式蒸留器を使った製法を指す。

ウォッカ750ミリリットルにジュニパーベリーを大さじ2杯。これより少量でコリアンダーやシナモンなど、ボタニカル(植物由来成分の意)と呼ばれる、好みのハーブやスパイスを加える。消毒した器に入れて冷暗所で24時間。柑橘類の表皮などを加えてさらに24時間。時々かきまぜ、味見してよさそうなら、ろ過して数日待つ。すると、手作りジンの完成だ。

このレシピは、筆者が英国に留学していたころに同級生から教わったものだ。プロが専用の蒸留器で作る市販品とは異なるし、そもそもウォッカを使う時点でジンではない。色はにごり、味もバランスもまちまちではある。

それでも欧州では、自分好みの味になるよう、趣向を凝らした手作りジンを楽しむ人が多い。きっと前述のレシピもいろいろバリエーションがあるのだろう。

6600万本。2018年に英国の消費者が購入したジンのボトル数である。前年比41%増で、売り上げは19億ポンド(約2739億円)に上ったといい、いまや国家統計で消費者物価インフレ指数計上に使われる消費財リストにもジンが含まれている。

イングランドの蒸留所は、2018年に166軒を数え、それまで国内の蒸留酒生産の主力だったスコットランドの蒸留所数を初めて上回った。2010年には23軒だったというから、急増といっていいのではないか。

ジンと、再生を意味するルネサンスをかけた"ジネサンス"という造語も生まれた。再生という言葉が示す通り、英国でジンが流行したのは近年が初めてではない。17世紀終わりにイングランドの王位に就いたオレンジ公ウイリアムが母国オランダから持ち込んだジュネヴァという飲み物が英国にジンが普及したきっかけと言われている。

ジュネヴァは当初、上流階級の飲みものだった。これが景気政策により免許なしでも蒸留できるようになり、18世紀の英国に"Gin Craze(ジンの狂気)"と呼ばれる大流行が起こる …

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