英国と日本には共通点がある。島国で、人口密度が高い。かたや武士道、かたや騎士道。象徴君主を置き、お茶が好き。全く異なる点もあるが、英国のいまは、ヒントになるだろう。現地からのレポートをお送りする。

ハロッズの食材コーナー。つがいが添い遂げる習性があるとされるロブスターは、ヴァレンタインの人気メニュー。
"For this was on seynt Volantynys day, Whan euery bryd comyth there to chese his make."『聖ヴァレンタインの日、(自然宮に)全ての鳥がつがいを選びにやってくる』──『カンタベリー物語』で知られる14世紀ロンドン生まれの詩人、チョーサーが詩集『百鳥の集い』の中で唄った一節だ。
ヴァレンタイン・デーの2月14日は3世紀のローマ時代に聖人ヴァレンティノが殉教した日と言われている。しかし、元々この日は古代ローマのペーガニズム(自然信仰)における、ルペルカリアという春の訪れを祝う日であった。つまりヴァレンタイン・デーは、異教の習わしを排除してキリスト教を広めるために、カトリック教会が設けたという説もある。現代の私たちが知るロマンティックな意味合いは微塵も感じられない。
それを、春の訪れから転じて鳥たちが伴侶を見つける日、つまり恋の日として表現したのが冒頭の詩である。この詩のイメージも手伝ったのか、乙女はヴァレンタイン当日の朝一番に出会った異性と結ばれる、という言い伝えも生まれた。
16世紀の終わり、イングランド生まれの劇作家シェイクスピアが著した『ハムレット』では、第5幕で乙女のオフィーリアが次のように歌う:"明日はヴァレンタイン、私は朝早くに貴方の窓辺に立ち、貴方のヴァレンタイン(伴侶)になる"。これはまさに先述の言い伝えを表しており、この時代のイングランドでは、すでにヴァレンタイン・デーが恋の日として認識されていたことが伺える。
ヴァレンタイン・デーは、恋人が愛情を文にしたためる日でもある。史上初のヴァレンタイン・カードはロンドン塔の中で書かれた …