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THROUGH BOUNDARIES

行動データの光と影──「通知と同意」をめぐって

朱 喜哲(哲学者/プランナー)

実店舗でもカメラを活用し、来店客の行動データを分析する動きがある(写真=123RF)

「認知度なんてぬるい」「ちゃんとコンバージョンを計測しましょう」──そんな会話が、きょうもどこかのオフィスで交わされているに違いない。マーケティングに従事する者にとって、Web上の行動や位置情報などに由来する「行動データ」が、調査によって計測する「意識データ」に取って代わって久しい。

ECサイトであれば「クリック」や「カート遷移」「購入」などは、流入元と紐づく形で容易に計測されるし、ログイン情報と照合すれば各種の登録済み個人情報と行動データが結びつく。リアル空間においても、スマートフォン位置情報はもちろん、画像解析技術の進展による個人認証や行動トラッキングは、広範に活用されはじめている。

理論に目を向けても、2017年にノーベル経済学賞を受賞した行動経済学の「ナッジ」──合理的な説得によらず、傾向性にもとづいて行動を誘導する手法──は、行動データ時代の介入の在り方のモデルとして普及している。ナッジは、マナー向上など行動喚起が必要な場面において、ただ啓発的なメッセージを発するよりずっと効率的に成果をあげている。

注目したいのは、こうした行動データとデータ提供主体、そしてデータ利活用主体との関係である。調査に基づく意識データとは異なり、行動データは「計測されたこと」を提供者が自覚していない可能性がつねにともなう …

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