健康食品や国産ブランド品のPRが重視される中、食品業界では納豆の販売額が急成長している。全国納豆協同組合連合会(納豆連)の推計では、2016年の市場規模は前年比16%増の2140億円と過去最高を記録。そうした中、ミツカンは、納豆の食シーンを広げるべく、新たな商品開発とPR戦略に乗り出している。
2017年9月、それまでのごはん+納豆という概念を覆し、ミツカンは「サラダをおいしく!」をキャッチフレーズに「金のつぶ」シリーズで新商品を発売した。コンセプトは「サラダ用納豆」。1990年代後半に納豆市場に参入した同社が市場で差別化を図りながら躍進するために打った戦略とは。商品企画部の小塚莉加氏に話を聞いた。
──納豆で「サラダをおいしく!」とうたった商品ですが、どんな特徴があるのでしょうか。
香りの良い焙煎すりごまを使用した「ごま醤油たれ」が付いており、納豆とよくあえてサラダ、ゆで野菜、冷奴などに乗せて味わうことを提案しています。自社調べでは、納豆を乗せたサラダは、野菜だけと比べて、たんぱく質は約5倍、食物繊維は約2倍の栄養価があることがわかりました(※1)。
もともと健康イメージの強い納豆ですが、これまでの、ごはんに納豆、という食べ方に加えて、新しく、健康や美容を意識した食生活に自然にとけ込むような、「サラダと納豆」という食べ方を普及させたいと考えています。
現在、納豆市場は拡大を続けており、各社が国産大豆を使った安全・安心を打ち出す商品や、機能性のある納豆菌を使った商品をプロデュースするなど、差別化を図っています。
ミツカンが納豆事業に本格参入したのは、1997年のことです。納豆といえば、当社が古くから携わる食酢醸造と並ぶ、日本の伝統的食文化。納豆の製造にもプライドを持って取り組んできました。
1998年発売の「金のつぶ」も、食酢醸造の現場で培った独自の発酵技術と、菌の育種技術がベースにあります。このシリーズではこれまで、納豆のおいしさは従来のまま、におわない納豆菌を使用した「におわなっとう」、納豆業界初の特定保健用食品になった「ほね元気」、食べやすさを追求した「とろっ豆」など、ターゲットのニーズに寄り添い、独自路線を開拓してきました。
2017年7月には「金のつぶ パキッ!とたれ とろっ豆 3P」が発売から10周年を迎え、通算出荷数量が18億食を突破しました。これもひとつの転機と考え、市場が活気を帯びている流れを汲み、新たな食べ方を生み出そうと市場に投入したのが「金のつぶサラダをおいしく!ごま醤油たれ 3P」です。
──貴社の強みを生かすため、技術部門、企画部門では、どのような工夫をされていますか。
当社は、納豆自体で差別化を実現する開発力が強みのひとつだと思います。2013年には納豆菌の研究で日本農芸化学会・農芸化学技術賞を受賞しました。個性的な納豆菌を独自に研究開発し、それを商品化につなげたことはもちろん、そうした先駆的な商品を「金のつぶ」シリーズとして展開し、納豆需要を拡大してきたこと。さらに、納豆という食品そのものの品質向上にも同時に取り組んできたことが高く評価されました。
納豆の開発を行う技術部門でも、販売戦略を考える企画部門でも、共通するのは、消費者が求める納豆の価値を大切にしながら、新しい食シーンを作ること …